個人開発Read this article in English

初めてゲーム翻訳を外注する — 依頼から納品確認までの流れ

翻訳をお金を払って頼もう、と決めるところまでは簡単です。難しいのはその直後にくる全部です。どこで探せばいいのか分からない。翻訳者が自分から何を必要としているのか分からない。そもそも常識的な依頼文がどんなものか分からない。そして、返ってきたものが良いのか悪いのか判断できる気がしない。

これは工程が複雑だからではありません。誰も最初から最後まで説明してくれないので、初めての発注者は手探りで進めることになり、避けられたはずの問題はだいたい同じ原因から生まれます。見積もりが出せる状態になる前に、話を始めてしまうことです。

この記事では、誰かに連絡する前の準備から、ファイルが届いたあとの確認までを順番に見ていきます。

連絡する前に、これを揃える

翻訳者は説明に対して見積もりを出せません。ファイルに対して出します。初回の問い合わせが返事なく終わる最大の理由は、そこに書かれているのがプロジェクトではなく構想であり、答えるには翻訳者側が無償で調査をしなければならないからです。

誰かに書く前に、以下を用意してください。どのみち必要になるものばかりですし、揃っていれば返信は早く、条件は良く、あとの行き違いは減ります。

  • 実際のテキストを書き出したファイル — 記憶による概算ではなく、正確な文字数・ワード数
  • 送る形式と返してほしい形式、そして翻訳者がその形式のまま作業できるか
  • 内訳: UI・システム文言、会話、ストアや宣伝文がそれぞれどれくらいか
  • 文字数制限がある箇所は、口頭で伝えるのではなく行ごとにデータとして記録しておく
  • 文脈資料: ビルドまたは体験版のキー、世界観と口調の短いドキュメント、キャラクター設定、UI文言が出る画面のスクリーンショット
  • 希望納期と、それが発売日で固定されているのか動かせるのか
  • 予算の幅 — 伏せても安くはなりません。望んでいない範囲の見積もりが返ってくるだけです

個人の翻訳者か、翻訳会社か

インディー規模の初回発注では、たいてい「言語ごとにフリーランス一人」か「複数言語をまとめて翻訳会社」かの二択になります。どちらが正解ということはなく、交換しているものが違います。

フリーランスの利点は、実際に文章を書いている本人と直接やりとりできることです。口調について相談でき、相手はこちらに質問でき、あなたのゲームへの理解がアップデートを重ねるごとに積み上がっていきます。代償は、言語ごとに自分で進行管理することと、パッチを出したいときにその人の手が空いていなければ、プロジェクトを知っている代わりがいないことです。

翻訳会社の利点は調整です。契約は一本、スケジュールも一本、複数言語を並行でき、レビュー工程が標準で含まれることも多い。代償は距離です。誰が訳しているのか分からないことが多く、質問は窓口を経由し、あなたのゲームを覚えてくれた人が次回もいるとは限りません。

どちらを選ぶ場合でも、実務的なポイントが二つ。第一に、一般的な翻訳経験ではなくゲーム翻訳の実績を確認すること。ゲームのテキストには、一般的な商業翻訳にはない慣習と制約とファイル形式があります。第二に、ポートフォリオではなく自分のテキストを使った少量の有償サンプルを頼むこと。実際の会話文を数百語、通常の単価を払って訳してもらう。この工程全体の中で、いちばん安く手に入る情報です。

最初の一通をどう書くか

良い打診文は、短く、具体的で、追加の質問なしに返事ができます。どんなゲームか、テキストがどれだけあるか、形式は何か、いつまでに必要か、文脈資料があるか。画面一枚に収まらない長さになると、返信率はむしろ下がります。

値引きの相談から始めない。実力を示すために無償で数行訳してほしいと頼まない。そして自分で数えていないうちは「少量です」と書かない。経験のある翻訳者は全員、テキストを書き出してもいない人から「少しだけです」と言われた経験があります。

英語で書く必要がある場合も、身構えなくて構いません。定型に情報を埋めるだけで十分に通じます。

Subject: Translation inquiry - [ゲーム名], JA to EN, ~12,000 characters

Hello,

I am the developer of [ゲーム名], a [ジャンル] game releasing on
[プラットフォーム] in [月]. I am looking for a translator for the
English version.

Scope: about 12,000 Japanese characters in total - roughly 2,000 of UI
and system text, 9,000 of dialogue, and 1,000 of store page copy.
Format: CSV with key, source, context, and character-limit columns.
Deadline: first draft by [日付], with about two weeks of flexibility.
Budget: [予算の幅].

I can provide a build key, a tone and setting document, character notes,
and screenshots for the UI strings. I am also happy to commission a
paid sample of a few hundred characters first if that suits you.

Would you be available, and what would you need from me to quote?

[名前]

見積もりが来たら、契約前に決めること

見積もりが返ってきたら、金額より先に構造を読んでください。単価は原文のワード単位か文字単位で示されるのが一般的なので、どちらを基準にしているかを確認します。そしてレビュー(第三者による訳文チェック)がその金額に含まれているのか別建てなのかを確認します。翻訳のみの価格と、翻訳+レビューの価格は比較できるものではなく、その違いは単価の多少の差より結果を左右します。

作業が始まる前に、以下を文章で合意しておきます。小規模な依頼なら、あとから双方が参照できるメールのやりとりで十分です。金額が大きくなってきたら契約書にします。

  • 範囲: どのファイルのどの行までか。数えたあとに追加したテキストをどう扱うか
  • 納品形式。そしてキー列が変更されずに戻ってくること
  • スケジュール。一括納品か、分割納品か
  • 修正対応が何往復まで含まれるか。何が修正で、何が新規依頼にあたるか
  • 支払い条件: 金額、通貨、時期、方法、送金手数料をどちらが負担するか
  • 支払い後の訳文の権利がどちらに属するか。こちらが編集してよいか
  • クレジット表記を希望するか、するならどの名義か
  • 未発表タイトルなら、秘密保持の扱い

作業中、質問が来るのは良い兆候

翻訳が始まったら、こちらができる最も有益なことは連絡が取れる状態でいることです。この二人は親しい間柄なのか、この語は固有名詞なのか、この変数に入るのは数値か名前か。こうした質問をしてくる翻訳者は、仕事をきちんとしています。三週間音沙汰なしで完成品が届くのは、必ずしも悪い兆候ではありませんが、感じるほど良い兆候でもありません。

質問の窓口を一か所に決めてください。共有ドキュメントでも、スレッドでも構いません。そして一件ずつ待たせるのではなく、まとめて回答します。同じ種類の質問に繰り返し答えているなら、その答えは用語集か文脈資料に書くべきものです。次の言語で同じ質問に答えずに済みます。

序盤で、固有名詞やシステム用語の訳語リストが確認のために送られてくることがあります。これは速やかに承認してください。九千行が書かれたあとで「このスキル名は別の訳語にしたい」と決めるのは、双方にとって高くつきます。

読めない言語の納品物を、どう検収するか

文章の巧拙は判断できません。しかしそれ以外は驚くほど多くを検証できますし、支払いを承認する前にやるべきです。

まず機械的に確認します。行数が送ったものと一致しているか。すべてのキーが存在し、変更されていないか。各行について、原文と訳文のプレースホルダーとマークアップタグが完全に一致しているか。訳文セルが原文と一字一句同じになっている行はないか(たいていは意図的な据え置きではなく、飛ばされた行です)。文字数制限を設定した行が、その制限を超えていないか。

次にゲームに入れて、目で見ます。残る問題の多くは視覚的なものです。ラベルの溢れ、ボタンの見切れ、フォントに文字がなくて豆腐(□)になっている箇所、変な位置での改行。どれも言語が読めなくても分かります。

文章そのものについては、正直なところ第三者の目が必要です。最も安く済ませるなら、その言語のネイティブであるプレイヤーや開発者仲間に、フルレビューではなく最初の1時間の印象だけ聞くこと。ひどく外れていれば数分で指摘が出ます。自然に読めてキャラクターの声が区別できる、という感想が返ってくれば、支払った分のものは手に入っています。

最後に、合意した条件どおり、速やかに支払ってください。フリーランスの世界は双方向に評判で回っています。期日どおりに支払い、明確なフィードバックを返す開発者は、良い翻訳者が次回のスケジュールを空けてくれる相手になります。これは思っている以上に効いてきます。次のパッチでも、また同じ人が必要になるからです。

関連記事