コミュニティ翻訳はいつ機能し、いつ静かに足を引っ張るか
コミュニティ翻訳、つまりプレイヤー自身にゲームを翻訳してもらう方法(公式にサポートする場合もしない場合もあります)は、机上ではかなり魅力的な選択肢に見えます。プロに依頼するのが到底現実的でない言語までカバーでき、しかもすでにゲームを愛している人たちが担当してくれます。一方で、始めてしまってから初めて表面化する現実的な弱点もあり、プロの翻訳の無料版として扱うのではなく、それ自体として正直に見ておく価値があります。
うまくいきやすいケース
コミュニティ翻訳がうまくいきやすいのは、特定の言語圏に熱心なファンコミュニティがすでにあり、少数のやる気と実力のある貢献者がその言語を「自分ごと」として担ってくれる場合です。緩くつながった大勢のボランティアが少しずつ手を出す形よりも、こちらのほうが機能しやすい傾向があります。また、翻訳が始まってから元のテキストがあまり変わらないコンテンツのほうが向いています。翻訳の途中で大きなコンテンツ更新が入ると、作業が分散して中途半端な結果が残りがちです。
逆にうまくいきにくいのは、対象地域にそもそもファンコミュニティが存在しない場合(そもそも人材のプールがない)、時間の制約があるコンテンツ(ボランティアの稼働は本質的に保証できません)、そして誤訳の影響が実質的なコンテンツ — 法的な注意書きや課金まわりの文言など、誤りがプレイヤーをお金の面で誤解させかねないもの — です。
すぐには表面化しない問題
最も一般的な問題は品質のばらつきです。貢献者ごとに翻訳の技量が異なり、レビューがなければそのばらつきがそのままプレイヤーに届きます。これに近い問題として一貫性があります。同じ用語に対して貢献者ごとに異なる訳語を選んでしまい、個々の選択自体は妥当でも、全体としては雑な印象を与えてしまいます。
燃え尽き(バーンアウト)は、もっとゆっくり進行するリスクです。一人の熱心な貢献者が長期間ある言語を一人で支えることもありますが、無償の作業はその人の他の生活と競合するため、予告なく速度が落ちたり止まったりしがちです。プロジェクトの途中で止まり、その言語が半端に翻訳されたまま長期間残ることもあります。
翻訳を始める前に決めておくこと
コミュニティ作業が始まる前に、意見が対立してから決めるのではなく、文書として明示的に決めておく価値のある論点があります。
- ライセンス — 翻訳テキストの権利は誰にあり、どんな条件で利用・編集・中止できるか
- クレジット — 貢献者をどう、どこで表記するか。それは確約なのかベストエフォートなのか
- 対象範囲 — どのテキストをコミュニティ翻訳に開放し、どれをプロ対応のまま残すか(法的文言、課金フローなど)
- 継続性 — 主要な貢献者が離脱した場合、その言語をどうするか
- レビュー — コミュニティからの提出をリリース前に採用・修正する最終判断は誰が持つか
貢献者をきちんと支える
先に挙げた品質と一貫性の問題は、多くの場合「才能の問題」ではなく「支援の問題」です。繰り返し出てくる用語 — キャラクター名、アイテム名、世界観固有の語彙 — の用語集を用意しておくだけで、訳語のばらつきの大部分は始まる前に解消できます。文字列だけでなく、そのセリフがどこで、誰が、どんな場面で話すのかという文脈を翻訳者に渡すことで、トーンの不一致を生む「当てずっぽう」を減らせます。
すべての文字列に安定したユニークなキーを付けることは、コミュニティ翻訳者にとってもプロの翻訳者にとっても同じくらい重要です。アップデートのたびにキーがリネームされたり使い回されたりすると、以前の翻訳作業を追跡しづらくなり、簡単に失われてしまいます。そして、クレジットへの掲載や目に見える形での感謝といった、コストのほとんどかからない認知は、貢献者が最初の翻訳分を終えたあとも関わり続けてくれる大きな理由になります。