スクリーンショットとトレーラーの多言語対応 — ストア素材の言語をそろえる
ストアページの説明文を英語にして、対応言語のチェックも増やして公開した。それでもページには、日本語のメニューが写ったスクリーンショットが6枚並び、トレーラーの冒頭には日本語のタイトルカードが出る。ストア素材は、ほとんどのチームで最後まで手が付かない部分です。
ところが実際のページの見られ方は、その順番と逆になっています。先に読み込まれて先に目に入るのは画像で、しかも画像はページの外に出ていきます。検索結果、ウィッシュリストの通知メール、キュレーターの投稿、動画サイト。そのどこにも、あなたが翻訳した説明文は付いていきません。
この記事で扱うのはストア側の素材です。スクリーンショット、カプセル画像やヘッダー画像、そしてトレーラー。ゲーム内のテクスチャやUIに焼き込まれた文字は、似ていますが解き方の違う別の問題なので、分けて考えるのが得策です。
プレイヤーは文章を読む前に画像を見ている
ストアページは上から順に読まれるものではありません。プレイヤーは検索結果やタグ一覧、フレンドのアクティビティ、キュレーターの投稿から流れてきて、1〜2秒で「これ以上見る価値があるか」を判断します。その1〜2秒で目に入るのは、カプセル画像、トレーラーのサムネイル、そして最初の2〜3枚のスクリーンショットです。あなたが翻訳した説明文は、その判断を通過した人だけが読むものです。
つまり、海外のプレイヤーがあなたのページで最初に出会う「ローカライズされたもの」は、文章ではありません。あなたのUIが写った、ゲームの画像です。そこに読めない文字が並んでいれば、説明文の出番が来る前に「これは自分向けではない」という答えが出てしまいます。
対応言語のチェックボックスだけでは、この状況は救えません。チェックは「主張」であり、スクリーンショットは「証拠」だからです。主張と証拠が食い違ったとき、多くの人は証拠のほうを信じますし、信じきれなかった人も、わざわざ確かめるのではなく、そっとページを離れます。
読めないスクリーンショットが伝えてしまうこと
画面の文字が読めなくても、プレイヤーはそこから何かを結論します。その結論は一つではなく、それぞれ失うものが違うので、具体的に見ておく価値があります。
最も多いのは、最も素っ気ない読まれ方です。このゲームは自分の言語に対応していない。この場合、クリックもウィッシュリスト登録も起きないので、あなたのデータには何も残りません。もう少し厄介な読まれ方が二つあります。一つは部分対応の推測で、字幕は訳されていてもメニューはそのままだろう、あるいは本編だけだろう、というもの。もう一つは放置の印象で、文章だけ自分の言語なのに画像が全部違う言語というページは自動翻訳の出品に見えることがあり、そこから「テキストも同じやり方で処理したのだろう」という連想が働きます。
四つ目は、何も問題を感じない読まれ方です。ジャンルによっては、外国語のままの画面が減点にならない層が確かにいます。日本製RPGや同人ゲーム、ニッチなシミュレーションを自分から探しに行くプレイヤーは未翻訳のページを何度も見てきていて、読めない文字は警告ではなく雰囲気の一部ですらあります。ただしこれは「もともとあなたの種類のゲームを探していた人」にしか通用しません。タグ一覧から偶然たどり着いた、はるかに人数の多い層には効きませんし、値段が付いた瞬間にも効かなくなります。スクリーンショットを見て対応していそうだと判断して買い、起動して未翻訳のメニューに出会ったプレイヤーの前には、返金申請と低評価レビューが並びます。売り逃しより高くつく結果です。
ついでに言えば、これは日本から海外へ出る側だけの問題ではありません。英語のUIしか写っていないスクリーンショットは、日本のストアページ上では、日本語のUIが英語圏で見えるのとまったく同じくらい不透明です。自分が読める言語の側だけ問題に見えないので、どちらの立場でも見落とします。
言語別に差し替えられる枠はどこにあるか
いまのストアは、説明文以外もローカライズできるようになっています。テキスト欄とは別に、画像や動画を言語ごとに割り当てられる枠があり、用意していない言語には既定の素材が表示される、という作りが一般的です。ただし、どの枠が言語別に差し替えられるのか、必要なサイズはいくつか、フォールバックがどう解決されるのかはプラットフォームごとに違い、時期によっても変わります。この記事を含めたブログの記述ではなく、各プラットフォームの管理者向けドキュメントの、ローカライズされたストア素材の節を必ず確認してください。
一方で、土台にある構造は計画を立てられる程度には安定しています。
- 必ず既定の素材セットがあり、用意していない言語の人にはそれが表示される — つまり部分的な対応でも壊れないので、2言語だけ用意しても安全
- 素材は国ではなく言語に紐づくのが普通で、1セットが複数の国をカバーする — ただし中南米スペイン語と欧州スペイン語、簡体字と繁体字のような分かれ方はプラットフォームごとに確認する
- 言語別素材をアップロードしても、対応言語の申告そのものは変わらない — 別々の宣言なので、両者の内容が食い違わないようにそろえる
- 動画と画像は入稿経路もローカライズの挙動も別なのが普通 — 撮影や編集の計画を立てる前に両方を確認する
差し替えが安く済む素材の作り方
最も差し替えの高くつく素材は、文字が絵と一体化してしまっている素材です。言語別素材のコストの大半は、2言語目を足すときではなく、最初にその素材を作った瞬間に決まっています。
まずスクリーンショットの選び方から。枠の数よりも候補フレームのほうがずっと多いはずで、その中には文字の少ないものがあります。戦闘のモーション中の一枚、探索中の静かな一枚、構図の良い風景。こうしたカットは、読める文字が一つもなくてもジャンル・アートの方向性・雰囲気を伝えますし、言語別の差し替えも要りません。文字の多いスクリーンショットは、その文字自体が売り物になっている場面 — 会話システム、デッキ構築のカードレイアウト、ステータス画面 — に絞ります。
スクリーンショットの上に載せる宣伝文句は、必ず独立したレイヤーに置き、元データを保存しておきます。編集可能なレイヤーに文字が乗っていれば、1言語あたり5分の差し替え作業です。同じ文字がPNGに焼き込まれていれば、作り直しになります。ファイル名の規則を決めて一式をまとめておけば、あとから言語を足す作業は発掘調査ではなく単純作業で済みます。
そして、文章ではなく枠を設計します。日本語でちょうど収まる長さのキャッチコピーは、ドイツ語やロシア語では溢れます。逆に英語向けに作った枠は、日本語や中国語では余白が目立ちます。余裕を持たせ、2行になっても崩れない位置に置いてください。フォントの確認も同じタイミングで行います。装飾的な欧文フォントには漢字もハングルもキリル文字も入っていないので、日本語版のキャプションを何の書体で組むのかは、締め切り直前ではなく今決めておくべきことです。
store-assets/
screenshots/
01-battle.psd # 文字は独立レイヤーに置く
01-battle_ja.png
01-battle_en.png
01-battle_zh-Hans.png
02-exploration.png # 文字なし - 全言語で1ファイル
capsule/
capsule_main.psd
capsule_main_ja.png
capsule_main_en.png
trailer/
trailer_master_clean.mp4 # 焼き込みテキストなしの素体
trailer_captions_ja.srt
trailer_captions_en.srtトレーラーには言語の層が3つある
トレーラーのローカライズは一つの問題ではなく三つで、この三つを分けることが作業の大半です。焼き込まれた宣伝テキスト(タイトルカード、機能の説明、最後の発売日カード)、たまたまUIが写り込んでいるゲーム映像、そしてナレーションやセリフの音声とその字幕。層ごとに、いちばん安い解き方が違います。
音声は録り直すより字幕トラックで対応するのが基本で、トレーラーを置くプラットフォームは字幕の添付に対応しているのが普通です。焼き込みテキストは、そもそも素体に入れないのが最善です。文字のないクリーンな映像で編集し、テキストは編集プロジェクト側のオーバーレイに置いておけば、言語版の作成は編集し直しではなく書き出し直しで済みます。いちばん厄介なのはゲーム映像で、他言語版の映像が要るなら、その言語のビルドで同じ場面を撮り直す必要があります。これはビルドが新しいうちのほうが圧倒的に楽で、半年後には同じ場面を再現できないことすらあります。
どの方針を採るにせよ、表示時間には余裕を持たせてください。日本語で快適に読める長さのカードは、より多くの文字数を要する言語では慌ただしくなります。あとから1枚あたり0.5秒ずつ足すためにトレーラーを組み直す苦労に比べれば、最初からその0.5秒を入れておくほうがはるかに安上がりです。
そして見落とされがちな点がもう一つ。トレーラーは、あなたが作るものの中で最も遠くまで運ばれる素材です。記事に埋め込まれ、動画サイトに転載され、フェスのリールで流れ、配信でリアクションされる。そのどれも、翻訳したストア説明文が付いていかない場所です。読まなくても何のゲームか伝わるトレーラーは、ローカライズが安く済むだけでなく、ストアページが届かない相手にまで届きます。
初めて見る人の目で確認し、この順に予算を使う
次に何を作るかを決める前に、想定するプレイヤーと同じ見方で自分のページを開きます。ストアの表示言語は切り替えられるので、対象言語に切り替えて、自信のある箇所までスクロールせずに、上から冷静に見てください。ページの上端だけで「これは何のゲームで、自分の言語で遊べるのか」に2秒で答えられなければ、まだ終わっていません。
次に、その言語を実際に読む人ひとりに5秒だけ見てもらいます。翻訳の講評を頼むのではなく、何のゲームに見えるか、何語のゲームに見えるか、それだけを聞きます。この質問は、チェックリストでは絶対に出てこない問題を表に出します。ストア素材が果たすべき仕事は、結局それ一つだからです。
その後は国別のトラフィックやウィッシュリストの動きを見ることになりますが、原因の帰属には注意してください。ストア素材だけが単独で変わることはまずなく、たいていは説明文の書き直しやセール、アップデート告知と同時に出ます。データは方向を示すものとして扱い、測定値としては扱わないこと。そして、自分の言語を読めない人にもページの意味が通じるようになった素材は、数字がはっきりしなくても残しておく価値があります。
発売時点で全言語分の素材一式をそろえられる開発者はほとんどいませんし、その必要もありません。次に作るものを決めるときは、この順に予算を使ってください。
- キャッチコピーが入っているならカプセル画像やヘッダー画像 — 検索結果・おすすめ枠・ウィッシュリストの通知メールに出るので、ページ本体よりはるかに多く見られる
- 最初の2〜3枚のスクリーンショット — 多くのプレイヤーが見るのはそこまで
- 上位1〜2言語のトレーラー字幕 — 言語の選択は一般的なランキングではなく、自分の国別ウィッシュリストとトラフィックのデータから決める
- 残りのスクリーンショットを、ページ上の並び順で
- それ以外は、上の言語が投資に見合うと確かめられてから