itch.ioとSteam、初めてのゲーム公開はどちらにするか
初めて作ったゲームが完成に近づくと、公開先を決めなければいけません。名前が挙がるのはたいてい itch.io と Steam で、しかも比較の軸は、いちばん早く見つかる情報 — つまり手数料 — になりがちです。
この比べ方だと、かえって決めにくくなります。この二つは、同じものの値段違いではありません。片方は発見の仕組みが付いた「店」で、もう片方は自分で作る「公開の場」です。初リリースが何のためのものかによって、答えが変わります。
以下では、初めての公開で実際に効いてくる違いだけを比較します。費用と準備期間、来ている人の性質、自分の言語の外へどこまで運んでくれるか、そして両方を使う場合の順番です。
そもそも種類の違う場所である
Steam は、周りに機構が付いた店です。来ている人は最初から買い物中で、カタログを眺め、ウィッシュリストに入れて発売やセールの通知を受け取り、レビューを読み書きし、そのレビューはページに永久に残ります。おすすめ枠や季節のセールがゲームを人の前に押し出します。ここで公開するということは、あなたのゲームを人に見せるか見せないかを決める仕組みの中に入る、ということです。
itch.io は公開の場に近い性質です。ページの作成は無料で、半日あれば出せます。レイアウトは自分の裁量で、ゲームジャムの仕組みがサイトに組み込まれていて、開発日誌をゲームの横に置け、投げ銭型の価格設定も特殊なことではなく、ブラウザで遊べるビルドはページ上でそのまま動きます。小さな初作品では、この「その場で遊べる」がプレイされるかどうかを分けます。
実務的な違いは流入です。Steam では、ゲームがプラットフォームの仕組みに引っかかれば、プラットフォーム側からも人が来ます。itch.io にあるのは URL で、流入は基本的に自分で連れてきた分 — ジャム、SNS、実況、コミュニティ — に、サイト内の回遊が少し足される形になります。
つまり問いは「どちらが優れているか」ではありません。この初リリースが何のためのものか、です。学習とフィードバックのためか、すでにいる読者やフォロワーに届けるためか、それとも売上が立つかを確かめるためか。
費用、審査、公開までの日数
Steam にはタイトルごとの一回きりの費用があり、一定の売上を超えると回収できる仕組みになっています。加えて売上の一定割合が手数料として引かれ、大きな売上に達すると条件が改善する段階があります。金額はこれまでも変わってきているので、ブログではなく公式のドキュメントで現在の数字を確認してください。そして、お金より重いのは日数です。ストアページの審査、ビルドの審査、支払いを受けるために必要な税務情報の入力、そしてストアページを公開してから発売できるようになるまでの最低期間があります。
最後の一つは初回の人がほぼ必ず引っかかります。すでに告知した発売日の1週間前に、必要な待機期間の存在を知る。避けられるのに非常によくある失敗です。リリース関連の要件は、出せそうだと思ったときではなく、日付を決めようとしたその時点で読んでください。
itch.io は公開自体が無料で、プラットフォームの取り分は自分で設定できます。ゼロにすることもできます。ページを作ってその日のうちに公開できます。決済には複数の方式があり、誰が販売者として立つのかによって税の扱いと入金のタイミングが変わるので、現在のドキュメントを読んでから決める価値があります。
itch.io の敷居の低さは長所であり、同時に落とし穴でもあります。未完成のまま出すことを誰も止めませんし、完成させるよう促してくるものもありません。Steam の手続きは難しくはありませんが、価格・対応言語・カプセル画像・タグ・発売日という一連の判断を強制的にさせられます。初めての開発者にとって、これは押し付けられる価値のある強制です。
向こう側にいる人が違う
客層は重なってはいますが、行動が違います。そして間違ったほうの数字で期待値を作ると、ゲームの評価そのものを読み違えます。
itch.io を眺めている人は、ジャム作品、実験的な作品、無料のもの、他では見ないものを探していることが多い層です。有料で売れることもありますし、大きく売れる作品も存在しますが、小さな初リリースで現実的に手に入るのはフィードバックと、遊んでくれた人と、あなたの名前を覚えた数人です。ここでの売上は、商業的な見込みの測定値ではなく、おまけとして扱うのが健全です。
Steam を眺めている人は買い物をしています。価格を比べ、ウィッシュリストを使い、返金の窓口があり、そしてレビューを書きます。そのレビューは、以後ページを見る全員の読み方を決めます。初リリースにとって最大の差はここです。荒い状態での発売は、Steam では公開の場に永続的に残ります。itch.io の評価やコメントは、それに比べればずっと軽い扱いです。
これは Steam を避ける理由ではありません。Steam を「自分のゲームが何なのかを学ぶ場所」にしない理由です。すでに誰かに遊ばれ、直され、実際のプレイヤーの反応をもとに手が入った状態で Steam に来たゲームは、初めての接触が商業リリースと同時だったゲームより、明らかに良い立ち上がりをします。
自分の言語の外へ、どこまで運んでくれるか
選ぶ前に最も見落とされ、そして海外に届けたい気持ちが少しでもあるなら最も大きい差がここです。
Steam は、欄を埋めさえすれば海外向けの作業をかなり肩代わりしてくれます。ストアページは言語ごとに用意でき、プレイヤーには自分の言語のページが表示されます。対応言語の申告は、プレイヤーが使う言語フィルタに直結していて、そのチェックの有無だけで「絞り込んだ結果に出るか出ないか」が決まります。価格は地域ごとに現地通貨で設定でき、現地の決済手段も処理され、ページの周囲のインターフェースはすでにその人の言語になっています。つまり、あなたのページだけで「現地のものらしさ」を全部背負わなくて済みます。
itch.io にあるのは、自分で書く1枚のページです。2言語で併記することは当然できますし、誰も止めません。ただし現状のプラットフォームの範囲では、掲載情報の言語別バージョンはなく、言語フィルタがプレイヤーをあなたのところへ連れてくることもなく、サイト側の画面は英語中心です。多言語の見せ方は手作業でやる前提で計画し、それ以上を期待する前に最新のドキュメントを確認してください。
ここから導かれる結論は「itch.io が劣っている」ではありません。Steam が海外向けに足してくれる価値は条件付きだ、ということです。言語欄を実際に埋め、ページを翻訳し、対応言語を正直に申告して初めて発生します。1言語だけで公開され、言語のチェックが空のままの Steam ページは、その機構の恩恵をほとんど受け取れません。自分の言語を読めない人に届けることがこのリリースで重要なら、その作業は参加費のようなもので、しかも金額は小さい。ストアページは数百語です。
国境を越えた入金の話もここに含まれます。Steam では税務情報の入力を経て、購入者側の税は販売の一部として処理されます。itch.io ではどの決済方式を使うかによって変わります。どちらも、その上に計画を積む前に支払いの仕組みを読んでおくべきところです。
併用する場合の順番
結局のところ多くの開発者は両方を使います。うまくいっている順番はだいたい共通しています。ジャム作品や試作、初期バージョンは公開が無料でフィードバックが目的の itch.io に置く。並行して Steam のページを早めに立ててウィッシュリストを溜め始める。発売は、発売の機構がある Steam で行う。そのあとも itch.io のページは残し、そこで買いたい人、バンドル、最初に見つけてくれた層のために置いておく。
両方で売る場合の注意点をいくつか。価格はストア間でそろえること。そして Steam キーを他所で売る場合の規定は具体的で実効性があるので、他ストアでの値引きや Steam キーを含むバンドルを計画する前に、現在のドキュメントを読んでください。もう一つ、itch.io の体験版は Steam のウィッシュリストを増やしません。ボタンが Steam にしか存在しないからです。ウィッシュリストが目的なら、体験版はボタンのある場所に置く必要があります。
日本語圏だけに届けばよいなら、BOOTH やふりーむ、DLsite といった国内の公開先も選択肢に入ります。ただしこの記事の主題である「自分の言語の外へ運んでくれるか」という観点では、Steam が持っている言語別ページと言語フィルタに相当するものは期待できません。目的で選び分けてください。
そして維持の手間も正直に見積もること。2つのストアは、2つのアップロード手順、2つの更新履歴、2つのコメント欄、そして同じ質問に2回答える場所を意味します。小さなコストですが、一人で初めてのゲームを出す人にとっては、バグを直す時間と直接取り合いになります。
選び方と、この選択が思っているほど不可逆ではない理由
先にはっきり書いておきます。この判断は、実際の重さよりずっと大きな不安を生みがちだからです。itch.io で公開したことで、後から Steam に出せなくなることはありません。ジャム作品から itch.io のページを経て Steam でのフルリリースに至ったゲームはいくらでもありますし、初期バージョンは恥ずかしい過去というより、実際に遊ばれた証拠であり、ゲームが良くなっていった公開記録として資産になります。
本当に取り返しがつきにくいのは、ビルドもストアページも言語対応も整わないうちに Steam で発売してしまうことです。発売前後に得られる注目は一度しか来ませんし、その週に書かれたレビューはページに残り続け、後から出す修正はそれを読んだ人数より少ない人にしか届きません。
そのうえで、このリリースで何を達成したいのかで選んでください。迷ったときは、やり直せるほうを選ぶのが原則です。
- 学習・フィードバックが目的、あるいは小規模・実験的・無料の作品 — 迷わず itch.io から。間違えたときの損失がほぼゼロ
- すでに見てくれる人がいて、売上が立つかを確かめたい — Steam。ただし準備期間を甘く見ず、リリース要件を読んでから日付を決める
- 初日から自分の言語の外にも届けたい — Steam。ただしストアページを翻訳し、対応言語の欄をきちんと埋めることが前提
- 各プラットフォームの規約の境界に近い内容を含む — 方針が実際に異なるので、計画を立てる前に両方の規約を読む
- 決められない — itch.io で出して実際のプレイヤーを集めつつ、その反応を使いながら Steam のページを立てておく。安い場所に出して実際のプレイヤーから学び、たった一度の発売はゲームが人に会える状態になってから使う