ストア・海外リリースRead this article in English

Steamの対応言語表記は何を約束しているのか — インターフェース・音声・字幕

ストアページの設定を進めていくと、対応言語のマス目に行き当たります。左に言語がずらりと並び、上に3つの列があり、あとは空のチェックボックスだけ。画面のどこにも、何を満たせばチェックしてよいのかは書かれていません。最低カバー率の基準もなく、審査もなく、自動チェックもありません。チェックした内容が、そのままページを見た全員に表示されます。

基準が示されていないので、同じ疑問が繰り返し出てきます。メニューは訳したがシナリオは原語のまま、これは対応と言えるのか。機械翻訳をざっと見ただけのものはどうか。読めない言語をファンが訳してくれた場合はどうか。

この記事では、3つの列がそれぞれ何を主張しているのか、「対応」と名乗るための現実的な線はどこか、そしてその線の内と外で何が起きるのかを整理します。付けすぎと付けなさすぎはどちらも損をしますが、損の大きさは対称ではありません。

3つの列がそれぞれ意味するもの

3つの列は「インターフェース」「フルオーディオ」「字幕」です。同じものの3段階ではなく、ゲームについての別々の3つの事実を述べています。

インターフェースは、プレイヤーがゲームを操作するために読むテキストです。メニュー、設定、HUD、チュートリアル、アイテム名やスキル名、エラーメッセージなど。ただし実際のプレイヤーは、この欄を「自分が目にする文字は全部その言語である」という約束として読みます。ここが最もよくあるズレの原因です。メニューは訳したが会話は原語のままという状態でインターフェースにチェックを入れると、狭く解釈すれば嘘ではないとしても、届けていないものを約束したことになります。

フルオーディオは、その言語で収録された音声のことです。効いているのは「フル」の部分です。カットシーンだけ、あるいは一部の掛け声だけの収録はフルオーディオではありませんし、そう名乗ると、最初の未収録シーンに到達した瞬間にはっきりと落胆されます。

字幕は、その言語での音声に対する字幕です。字幕をつける音声が存在して初めて意味を持つ欄です。ボイスがまったくないゲームには、音声側の2列で主張することは何もありません。インターフェースだけにチェックが入った行を見たプレイヤーは、テキストがすべてその言語なのだと理解します。ただしそれは、インターフェースの主張が本当にすべてのテキストについて成り立っている場合の話です。

3つの列は独立しています。英語ボイスがあり、日本語のテキスト翻訳が完全にあるゲームなら、日本語の行はインターフェースと字幕、英語の行はそれに加えてフルオーディオになります。この組み合わせはごく普通で、プレイヤーにも正しく伝わります。

誰も検証しない。つまりこれは設定ではなく約束である

仕組みの話をはっきりさせておくと、チェックを入れた言語でプラットフォーム側の誰かがあなたのゲームを遊ぶことはありません。この欄は認証ではなく、購入者に対して自分が行った表明です。そして購入者への表明は、いつでも購入者によって取り立てられます。

取り立ての手段は返金とレビューです。「対応言語に入っていたから買った、入っていなかった」で返金する人は、直接の損失にはなりません。同じ経験をしてレビューを書く人は、長く残る損失になります。修正パッチを出したあともレビューは表示され続け、書き直しに戻ってくる人はほとんどいないからです。

逆方向にも効いています。プレイヤーは言語で絞り込んで探せますし、自分の読める言語のゲームだけが目立つようにストアの設定を変えている人も少なくありません。チェックが入っていない言語は、カプセル画像を人間が見るより前に候補から外れている可能性があります。つまりこの欄は両方向に実際の効果を持っていて、だからこそ「まあいいか」で決めるべきものではありません。

「対応」と名乗ってよい線はどこか

役に立つ判定基準は、翻訳が優れているかどうかではありません。その言語しか読めないプレイヤーが、最初の画面から最後まで、言語を切り替えることなく、抜けているテキストや読めない文字や知らない言語の文章に出くわすことなく遊び切れるか、です。

これは3つの下限に分解できます。チェックを入れる前に、明示的に確認する価値があります。

  • 網羅されているか — メインの導線上に未翻訳の文字列が残っていないこと。誰もテストしない場所を特に見ます。設定メニュー、ポーズ画面、セーブや削除の確認ダイアログ、通信エラー、スタッフロール、ストアやDLCの案内文
  • 進行に関わる箇所が正しいか — 操作説明、チュートリアル、謎解きのヒント、プレイヤーに何をすべきか伝えるテキスト。フレーバーテキストの珍訳は笑い話ですが、操作説明の誤訳は返金です
  • 表示できているか — 豆腐(□)になっていない、枠からはみ出していない、ボタンで切れていない。UIに収まらない完璧な翻訳は、対応言語とは言えません

付けすぎの損と、付けなさすぎの損

付けすぎの失敗は、狙った市場の大きさに対して不釣り合いに大きな損になります。チェックボックスを見て来てくれるプレイヤーは、まさにそのギャップを許容できない層であり、しかも届けられていないものを期待した状態で来ます。書かれるレビューはその言語なので、次に来たその市場のプレイヤーは、あなたの説明文より先に、自分の言語で書かれた警告を読むことになります。中途半端に名乗った言語からの売上は、レビュースコアへの打撃まで含めると差し引きマイナスになりうるものです。

付けなさすぎの失敗は静かに進みます。だから気づきにくく、逆に過剰に補正してしまいがちです。買ってくれたはずのプレイヤーはページにたどり着かず、掲示板には「この言語には対応していますか」という質問が繰り返し届きます。劇的なことは何も起きず、ただ売上が立たないだけです。

判断の核心はこの非対称性です。あとから言語を追加するのは簡単です。パッチを出し、チェックを入れ、お知らせを投稿すればよく、そのお知らせ自体がちょっとした宣伝の機会になります。一方、「翻訳が壊れている」というレビューの波から回復するのは簡単ではなく、そもそも回復できないこともあります。迷ったときに倒すべき方向は「少ない言語をきちんと」であり、時間をかけて動かす方向は「増やす」です。

部分対応を誠実に見せる

部分対応は非常によくある状態で、隠すべきものではありません。書くべきものです。しかも、それが関係する言語で、それが関係する人が読む場所に書く必要があります。

重要なのは、どの言語で書くかです。「日本語訳はメニューのみです」という注記を日本語で書いても、それが必要な英語圏のプレイヤーには届きません。逆も同じです。注記は、その言語版のページの説明文の冒頭付近に、その言語で置きます。Steamworksには対応言語の設定に短い注記を添える場所もあります。正確な位置は公式ドキュメントで確認したうえで、両方に書いておくのが確実です。

作り方が通常と違う場合は、それも書きます。プレイヤーは、機械翻訳ベースであることや有志翻訳であることが明示された翻訳に対しては、同じ品質でもはるかに寛容です。表示があることで、落胆が事前の了解に変わりますし、苦情が修正提案に変わることも多くあります。有志の翻訳だと知っている人は、レビューを書くより先に誤りを教えてくれる傾向があるからです。

対応言語について(最新アップデート時点)

日本語   - 全対応: インターフェース、シナリオ、アイテムテキスト
英語     - 全対応: インターフェース、シナリオ、アイテムテキスト
簡体中国語 - インターフェースとメニューのみ。シナリオは英語表示
韓国語   - 有志翻訳、対応作業中。誤訳のご報告は <リンク> まで

ボイスは日本語のみです。上記すべての言語で字幕を表示できます。

言語を増やすときの手順

チェックを入れるのは最初ではなく最後の作業です。先にチェックしてしまうのが、この件が悪い方向に転ぶ典型パターンです。ビルドがまだ追いついていない段階から、ストアがその言語のプレイヤーを送り込み始めてしまいます。

  • テキストが揃っているか確認する — ファイルが完成して見えることを信用せず、未翻訳・欠落キーの検査を実際に走らせる
  • その言語で最初から最後まで通しでプレイする。実際に配信するプラットフォームで、サポートする最小解像度・最小ウィンドウサイズで確認する
  • その通しプレイで見つかった表示の問題を直す — フォントの収録文字、はみ出し、改行位置、切れている箇所
  • その言語のストアページを更新する。短い説明文も忘れずに
  • ビルドを配信し、そのうえでチェックを入れ、その言語でお知らせを出す
  • 最初の2週間はその言語のレビューと掲示板を見る。自分のテストで漏れたものが分かるのはこの期間です

その前に決めておくこと

ここまでの話は、どの言語に挑戦するかをすでに決めていることを前提にしています。その選択にはそれ自体の検討が必要で、チェックボックスの一覧はその決定を下す場所として最悪です。空のマス目が並んでいると、埋めたくなるからです。

健全な捉え方は、1行ごとに尾を引く約束をしている、というものです。チェックを入れた言語は、これから出すすべてのパッチ・イベント・DLCを訳し続ける対象になります。訳し続けられなくなった瞬間、その行は静かに嘘になります。維持できない言語は、最初から手を出さない言語より悪い結果を生みます。ゲームはその言語で少しずつ劣化していくのに、ストアは対応していると言い続けるからです。市場規模を数える前に、継続コストを数えてください。

関連記事