ゲームの多言語対応・海外展開を学ぶおすすめ本
English versionゲームを他の言語のプレイヤーに届ける作業(ローカライズ)と、海外で売るための知識は、まとまった本が少なく、探しにくい分野です。このページでは、実務で参照し続けられる本を「何の役に立つか」で4つに分け、読者のタイプ別に読む順番も示します。
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読者タイプ別・読む順番
個人で作ったゲームを海外でも売りたい
海外のプレイヤーに届けたい。作業の大半は自分でやる。
- インディーゲーム・サバイバルガイド
- 日本人の英語
- ゲームと法律 攻略ガイドブック
ゲームの翻訳・チェックを仕事にする
翻訳する側、または訳文を検査する側。技術と制約の両方を知りたい。
- 出版&映像翻訳 完全ガイドブック
- 翻訳のレッスン
- Localizing Apps
- 記者ハンドブック
スタジオとしてローカライズの体制を決める
外注するか、何を要求するか、納品をどう検証するかを決める立場。
- The Game Localization Handbook
- 日本語スタイルガイド
- ゲームをテストする
このページの本の選び方
- 当事者が書いた本、または公的・公式な基準であること。要約の要約は載せません。
- 2026年時点で入手でき、最新版であること。各カードに出版年と版を明記しています。
- 読んだあとに手が動くこと。手順・判断基準・チェック項目があり、背景知識だけで終わらない本を選んでいます。
各本の説明は目次と出版社の紹介文に基づいています。架空の感想や星評価は書きません。評価はリンク先のレビューでご確認ください。
ゲームのローカライズとチェック(LQA)
ゲームのテキストがどう翻訳され、組み込まれ、検証されるか。工程を扱う専門書に加えて、翻訳後のテキストが実際にぶつかる問題(テスト、UIの文字幅)を扱う日本語の2冊を入れています。
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日本語 · イカロス出版 · 2022
出版&映像翻訳 完全ガイドブック メディア・エンタメを訳そう!
イカロス出版(編)
エンタメ翻訳の仕事をまとめたムックで、ゲーム翻訳のパートがある。ローカライズの工程、仕事に就くまでの道筋、現役ゲーム翻訳者へのインタビューを収録。ゲーム翻訳を仕事として扱う、現在入手できる唯一の日本語書籍。
向いている人: ゲーム翻訳を仕事にしたい人と、発注先の翻訳者が何をしているのか知りたい開発者。翻訳技法の本ではない。
英語 · Routledge · 2015
Localizing Apps: A practical guide for translators and translation students
Johann Roturier
翻訳者の側から見たソフトウェアローカライズの実務。文字列がどう格納・抽出されるか、プレースホルダーと文字コード、リソースファイル、訳文をどう検証するか。ゲーム専門ではないが、扱う問題はすべてゲームのテキストでも起きる。
向いている人: ソフトウェアやゲームの翻訳に移りたい翻訳者と、翻訳ファイルの何が壊れるのかを理解したい開発者。英語の技術書を読み慣れている前提。
英語 · John Benjamins · 2013
Game Localization: Translating for the Global Digital Entertainment Industry
Minako O'Hagan, Carme Mangiron
翻訳学の側からゲームローカライズを体系立てた研究書。カルチャライズ、トランスクリエーション、業界の歴史、文芸翻訳・映像翻訳との違いを、日本のタイトルを多く含む事例とともに論じる。
向いている人: 実務の背後にある枠組みを知りたい翻訳者・学生。制作現場の手順書ではない。
英語 · Jones & Bartlett Learning · 2011 · 第2版
The Game Localization Handbook
Heather Maxwell Chandler, Stephanie O'Malley Deming
翻訳者ではなく「ローカライズの進行を担う人」向けの実務書。計画と予算、プリプロダクション、外部ベンダーとの進め方、テストまでを、実際のタイトルの事例つきで扱う。ツールやプラットフォームの記述は古いが、判断の順序は今も変わらない。紙の輸入版は高価なので、日本から買うなら現実的にはKindle版。
向いている人: 初めてローカライズを計画するプロデューサー・リード・個人開発者。文レベルの翻訳技法を求める翻訳者向けではない。
日本語 · 翔泳社 · 2022
ゲームをテストする バグのないゲームを支える知識と手法
花房輝鑑
ゲームQAの基礎から。テストの目的、テストの種類、テストケースの書き方と回し方、自動化の位置づけ、テスターの仕事。ローカライズのチェック(LQA)の実態に最も近い日本語の本。
向いている人: リリース前のチェック体制を作りたい開発者と、LQAの仕事に入る人。QA全般の本なので、ローカライズは多くのケースの一つとして出てくる。
日本語 · 翔泳社 · 2022
実践ゲームUIデザイン コンセプト策定から実装のコツまで
太田垣沙也子
現役のUIデザイナーによる、コンセプト策定から実装までのゲームUI設計。レイアウト、テキストボックス、可読性、そして「どこにどれだけ文字が入るか」を決める制約。翻訳した文字列があふれるのはまさにこの部分。
向いている人: 文字のはみ出しに何度も当たり、レイアウト側から直したい開発者・ローカライズ担当。翻訳そのものの本ではない。
翻訳の技術と、翻訳者の仕事
翻訳する人・訳文をレビューする人のための本。英語から日本語への文レベルの技術、現役の翻訳者が語る仕事の実際、そして自分で英語を書く開発者向けの定番を1冊。
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日本語 · アルク · 2018
翻訳地獄へようこそ
宮脇孝雄
ベテランの文芸翻訳者が、英語から日本語への実際の誤訳を例に、なぜそう訳してしまうのかを解く。字面どおりに読んだ慣用句、見落とした文化的な参照、平板になった語調。具体例中心の短い章立て。
向いている人: 英→日の翻訳者と、日本語訳をレビューする側で何を見ればよいか知りたい開発者。日→英には向かない。
日本語 · 講談社 · 2016
できる翻訳者になるために プロフェッショナル4人が本気で教える 翻訳のレッスン
高橋さきの、深井裕美子、井口耕二、高橋聡
文芸・技術・産業翻訳の現役翻訳者4人が、良い翻訳とは何か、それを実際にどう作るかを語る。原文を正しく読むこと、日本語として読める日本語を選ぶこと、自分の訳文を検査すること。
向いている人: 翻訳者として始めたばかりの人と、「なんとなく変」以上の言葉で訳文の質を判断したい人。対話形式で、教科書ではない。
日本語 · アルク · 2017
翻訳スキルハンドブック ―英日翻訳を中心に
駒宮俊友
英日翻訳を、読む・調べる・訳す・直すという別々の技能に分けて、演習つきで鍛える。翻訳を才能ではなく、繰り返せる手順として扱う。
向いている人: 体系的に練習したい独学者と、「レビュー」の中身を定義したいチーム。経験の長い翻訳者には基礎的。
日本語 · 筑摩書房(ちくま学芸文庫) · 1995
英文翻訳術
安西徹雄
文法の分析と短い文章の実例を通して、英語から日本語への文の組み替えを訓練する定番の技法書。理論ではなく、文単位の技術を身につけるための本。
向いている人: 英→日の文レベルの技法を鍛えたい翻訳者。日→英の人には向かない。
日本語 · 岩波書店(岩波新書) · 1988
日本人の英語
マーク・ピーターセン
日本語話者が気づかずにしてしまう英語の間違い(冠詞、可算・不可算、時制、語順)を、日本語を読めるネイティブが内側から説明した定番。何十年も版を重ねているのは、間違いの種類が変わっていないから。
向いている人: 英語のストアページ、パッチノート、海外プレイヤーへのメールを自分で書く日本の開発者。翻訳の本ではない。
英語 · Routledge · 2020
Japanese–English Translation: An Advanced Guide
Judy Wakabayashi
日→英の翻訳で繰り返し現れる問題(文体の硬さ、省略、文構造、ジャンルごとの慣習)を13のテーマに分け、演習と実例で扱う。
向いている人: すでに日→英の翻訳をしている人の、問題別の参照書。経験者向けで、入門書ではない。
表記・スタイルの基準
表記ゆれの議論を「この本に従う」で終わらせるための基準書。公開されている日本語の表記基準、UIや技術文書の日本語で使われるスタイルガイド、英語側の規範。
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日本語 · 共同通信社 · 2022 · 第14版
記者ハンドブック 新聞用字用語集
一般社団法人共同通信社(編)
新聞各社が表記を揃えるために使う用字用語集。漢字と仮名の使い分け、送り仮名、かな遣い、差別語・不快用語への配慮を実例つきで示す。日本語の表記で迷ったときの「これに従う」基準として。
向いている人: 日本語のテキスト量が多く、表記の拠り所を1つ決めたいチーム。文体の手本ではない。
日本語 · 日本エディタースクール出版部 · 2012 · 第2版
日本語表記ルールブック
日本エディタースクール(編)
句読点、かっこ類、数字の表記、送り仮名といった日本語表記の基本ルールを項目別に整理した短い参照書。通読でき、スタイルガイドの「表記」欄の土台にしやすい。
向いている人: 表記のルールを短時間でまとめて確認したい編集者・翻訳者。体系的な文章読本ではない。
日本語 · テクニカルコミュニケーター協会 · 2016 · 第3版
日本語スタイルガイド
一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会
マニュアル、UI、技術文書の日本語の書き方を、テクニカルライティングの業界団体がまとめた基準。文の長さ、カタカナ語と長音符、数字と単位、記号、一貫性。新聞系の基準は文章向けで、こちらはゲームのメニューやヘルプ画面のようなテキスト向け。
向いている人: 日本語スタイルガイドの表記欄を書くローカライズ担当・LQAチーム。物語テキストだけのプロジェクトには重すぎる。
英語 · University of Chicago Press · 2024 · 第18版
The Chicago Manual of Style
The University of Chicago Press Editorial Staff
英語の編集・出版の標準規範。句読法、大文字の使い方、数字、引用、原稿の整え方を網羅し、第18版でデジタル出版とインクルーシブな言葉遣いの扱いを拡充。
向いている人: 英語のUI文言やドキュメントの表記を担当し、判断の拠り所が要る人。日本語だけのチームには不要。
日本語 · オライリー・ジャパン · 2022
戦略的UXライティング ―言葉でユーザーと組織をゴールへ導く
Torrey Podmajersky(著)、中橋直也(監訳)、松葉有香(訳)
プロダクトの文言を書く原則、声(ボイス)の定義と一貫した適用、UIを構成する短い文字列の設計プロセスを実務者が解説。ソフトウェア一般の本だが、メニュー、エラー、導入、ストア文言はゲームでも同じ問題で、こう書かれた原文は翻訳もしやすい。
向いている人: 翻訳に出す前にUI文字列やストアページを書く人。物語の文章の技法書ではない。
ゲームを売る・海外に届ける・個人開発を続ける
リリース、宣伝、小さな事業としての運営。日本のインディー開発者向けのガイド、海外で売る前に知っておきたい法律の基礎、そしてマーケティングとスタジオ経営の英語のハンドブック2冊。
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日本語 · 技術評論社 · 2021
インディーゲーム・サバイバルガイド
一條貴彰(著)、PLAYISM(監修)
ゲームを「完成させる」「知ってもらう」「届ける」「続ける」の4段階で、プレスリリース、展示会への出展、パブリッシャーとの契約といった実務を、インディー開発者へのインタビューとともに解説。
向いている人: 海外展開も視野に入れる日本のインディー開発者。海外パブリッシャーと契約済みの人には既知の内容が多い。
日本語 · 技術評論社 · 2026
ゲームと法律 攻略ガイドブック ~開発・宣伝・運営を支える基礎知識~
前野孝太朗
ゲームの開発・販売にかかわる日本の法律の基礎をQ&A形式で。知的財産、契約、利用規約とプライバシー、宣伝のルール、ガチャの表示、サービス終了。2026年7月刊で、現行のルールを前提にしている。
向いている人: パブリッシャーやプラットフォームと契約する直前、または自分で販売する直前の日本の開発者。日本法の本で、海外の法律については専門家の確認が必要。
日本語 · 自費出版(Kindle / ペーパーバック) · 2021
ゲーム開発者の地図: 20年の個人開発から学んだこと
SmokingWOLF
WOLF RPGエディターと『片道勇者』の作者が、20年の個人開発から学んだことをまとめた本。ゲームを完成させ続ける方法、時間をかけるべき場所、長く続けるための考え方。自費出版で、紙版はオンデマンド印刷。
向いている人: 1本出して終わりではなく、何年も個人開発を続けたい人。マーケティングや海外展開の本ではない。
英語 · Routledge (Focal Press) · 2015
A Practical Guide to Indie Game Marketing
Joel Dreskin
少人数・低予算のチーム向けに、ローンチ計画、プレス対応、コミュニティ運営をチェックリストの形で整理。各チャネルの細部は古いが、市場ごとに計画を組む骨組みが使える。
向いている人: 複数の市場で自分でローンチを回す開発者。パブリッシャーがマーケティングを担うなら不要。
英語 · Bithell Games · 2023
The GameDev Business Handbook: How to build the business you'll build games with
Michael Futter, Mike Bithell
小さなスタジオを事業として回すための本。予算、法人化、契約、知的財産、採用、PRを、ゲーム記者とインディースタジオの創業者が書いた。ソフトカバー版が2023年の更新版。
向いている人: 趣味のプロジェクトを会社にしようとしている人。事例は米英のもので、日本の会社法は扱っていない。
あわせて読みたい無料の一次資料
最も使う頻度が高い資料のいくつかは、無料で公式に公開されています。まずこちらを手元に置き、足りない深さを本で補うのが、費用をかけない順番です。
- JTF日本語標準スタイルガイド(日本翻訳連盟) — 翻訳業界団体が無料で公開しているPDF。多くの翻訳会社が既定で従う表記ルールなので、自分で決める前にまずこれを参照する。
- Microsoft ローカリゼーション スタイルガイド — ソフトウェアUI向けの言語別スタイルガイド。日本語版もあり、カタカナ語・長音符・全角半角の扱いは業界で最も広く踏襲されている。
- 公用文作成の考え方(文化審議会建議、2022年) — 国の公文書の表記方針。漢字の使い方、送り仮名、数字、句読点。新聞系の用字用語集が土台にしている一次資料。
- Steamworks ドキュメント「ローカライズと言語」 — Steamが言語ごとに何に対応しているか、ストアページの翻訳の仕組み、対応言語がプレイヤーにどう表示されるか。対応言語を決める前に読む。
よくある質問
- 紙とKindle、どちらを選ぶべき?
- テキストを検査しながら引く本(表記の基準書、スタイルガイド)は紙の方が使いやすい。通読する本はKindleで十分。Kindle版がある本はカードに両方のリンクを載せている。
- 出版年が古い本もある。まだ役に立つ?
- 古い本を残しているのは、教えている中身が変わっていないから。原文の読み方、ローカライズ工程の順序、日本語話者がしがちな英語の間違い。法律・プラットフォームの要件・ツールのように変わるものは、新しい本と無料の公式資料の方で扱っている。
- なぜ価格や評価が載っていない?
- Amazonのプログラム規約では、価格や評価はAmazonから都度取得したものしか表示できず、このページではそれをしていない。現在の価格・版・レビューはリンク先の商品ページで確認できる。
- この本はどう選んだ? 掲載料をもらっている本はある?
- 出版社や著者から掲載料は受け取っておらず、リンクを増やすために足した本もない。このサイトの読者が実際に持ってくる問い(他の言語で出すには、訳文をどう判断するか、レビューで何を根拠にするか)に答える本だけを載せている。アフィリエイトリンクは購入時に少額の紹介料が入る仕組みで、どの本を載せるかには影響していない。