Steamのウィッシュリストを増やす方法 — 実際に数字が動くのはどこか
ストアページを作った、あるいはこれから作ろうとしている。そして誰もが同じことを言います。「ウィッシュリストを積め」と。ところが、なぜその数字が重要なのか、いくつあれば十分なのか、今月使える時間をどこに投じれば実際に動くのかを説明してくれる人はほとんどいません。結果として投稿の頻度だけが上がり、カウンターがじわじわ動くのを眺め、効いているのかどうか分からないまま時間が過ぎます。
ウィッシュリストは、興味はあるが今日は買わないという人からの、小さな予約のようなものです。これが重要な理由は気分の問題ではなく仕組みの問題です。それは「その人が行動できる瞬間ちょうどに届くリマインダー」であると同時に、「ストア側があなたのゲームを誰に見せるか決めるときに読む信号」でもあるからです。
この記事では、効く順にレバーを並べます。ページをいつ公開するか、デモとフェス、プレイヤーがすでにいる場所へ出ていくこと、そして多くの開発者が最後まで触らないレバー — ページが何語で書かれているか、です。
ウィッシュリストは何をしてくれるのか
仕組みは2つあり、働き方が違います。1つは直接的なものです。Steamは、ウィッシュリストに入れた人に対して、そのゲームの発売時と割引開始時に通知を送ります。つまりウィッシュリスト1件は、購入に結びつく数少ない瞬間に確実に届く購入リマインダーであり、しかもメール配信の仕組みを自分で運用する必要も広告費もかかりません。
もう1つは露出です。ウィッシュリストの数と、それが積み上がる速度は、ストア内の発売予定タイトルの一覧に反映されます。速く積み上がっているタイトルは、検索していない人・見つける経路がなかった人の前に出ます。ここが複利で効く部分で、露出がウィッシュリストを生み、ウィッシュリストが露出を生みます。
1つだけ注意があります。この指標が人を惑わせるポイントです。ウィッシュリストは売上ではなく、そこから購入に転換する割合はゲームによって大きく違います。広く浅い流入で積み上げた大きな数字は、そのジャンルを本当に求めているコミュニティから積み上げた小さな数字より、転換が悪いことがよくあります。総数を眺めて安心する点数ではなく、推移を見る速度・解釈する信号として扱ってください。
ページは早く公開し、長く積む
構造的な失敗として最も多いのは、発売の数週間前になってからストアページを開くことです。ウィッシュリストは、あなたが使うあらゆる経路から時間をかけて積み上がります。1年前から存在するページは、その1年間のすべての投稿・動画・イベント・会話から回収し続けています。3週間前に開いたページは、直近3週間分の注目しか拾えません。そしてページが無かった期間に集めた関心は、行き先のないまま消えています。
近日公開ページを出すのに、完成したゲームは要りません。必要なのはストア審査を通せるだけの見せられる素材 — ヘッダー画像、スクリーンショット、説明文、多くの場合はトレーラー — です。正直に見せられる程度まで作れているなら、ページはもう存在していてよいはずです。
公開したら、リンクの規律を徹底します。開発日誌も、切り抜き動画も、SNS投稿も、動画の説明欄も、フェスの応募情報も、すべてそのページを指すようにします。当たり前に聞こえますが、ここは頻繁に壊れています。何か月もかけてSNSで注目を集めながら、着地先を用意していない開発者は珍しくありません。
ある程度は減ることも見込んでおきます。ウィッシュリストは削除されますし、開発期間が長ければ興味も薄れます。ただしそれへの対処は公開を遅らせることではなく、積み続けることです。削除は、増え続けている母数から引かれていくものだからです。
デモとフェスは、いちばん歩留まりの良い機会
デモはトレーラーよりも高い確率で、注目をウィッシュリストに変えます。プレイヤーはすでに時間を投じ、自分の意見を持った状態だからです。15分遊んで「続きが欲しい」と思った人と、30秒の映像を眺めた人は、見込みとして別物です。
フェスは、普段はきわめて見つけにくいものを一箇所に集めます。「まだ知らないゲームを、今まさに探しているプレイヤー」です。Steam Next Festやテーマ別のフェスは、まさにその層の前にデモを置いてくれますし、未完成のものを試すつもりで来ている期間なので、多少の粗にも寛容です。
実務上の制約は、この流入が実質1回きりだという点です。クラッシュするビルドや、退屈なチュートリアルから始まるデモで大型フェスに出ると、機会だけ消費してウィッシュリストは残りません。間に合っていないなら、今回ではなく次の開催に回すのがたいてい正解です。
デモそのものの作り方としては、満足感が成立する最短の断片を選び、区切りの良い「続きが気になる」瞬間で終わらせ、終了画面からストアページへ確実に導線を張ります。お礼の文言だけで終わるデモは、いちばん転換しやすい瞬間を捨てています。
プレイヤーがすでにいる場所へ出ていく
ストアは「すでに動いているもの」を後押しする性質があります。まだ何も動いていない段階では、これは困った仕様です。最初のかたまりは外から持ってくるしかなく、小規模チームで確実に効く経路は多くありません。
最も効率が良いのは実況者・動画クリエイターです。1本の動画が、ストアでは絶対に露出しなかった層に届きます。相手の手間を減らすのが要点で、説明なしで起動できるビルド、切り抜き用の映像と静止画をまとめた資料、明確な連絡先、そしてすぐ届くキー。狙うのは最大手のチャンネルではなく、すでにそのジャンルを扱っている人たちです。
ジャンルごとのコミュニティ — フォーラム、Discord、掲示板、地域の開発者コミュニティ — はもっと長い時間軸で効き、宣伝よりも参加に報います。ここでうまくいっている開発者は、売るものができるずっと前から、その場所にいる人として認識されています。
短いゲームプレイ動画は、繰り返せる形式の中でいちばん安く、積み重なります。1つの仕掛けを数秒で見せる切り抜きは、その週にやった作業からそのまま作れますし、個々の投稿がバズるかどうかより、続けていることのほうが効きます。
どの経路も最後は「リンクをクリックする」で終わります。だからページは、宣伝の後ではなく前に存在している必要があります。
海外のウィッシュリストは、ページが読めるようになると動き出す
ここまでの話はすべて、ページに辿り着いた人がそれを読めることを前提にしています。大手ストアを眺めている人のかなりの割合について、その前提は単純に成り立ちません。そしてこれは、宣伝の仕事に見えないという理由で、ほとんど誰も触らないレバーです。
Steamは、その言語のストア説明文が用意されていればプレイヤーの言語で表示し、なければ元の言語のまま表示します。重要なのは、この説明文が「ゲーム本体が対応している言語」とは独立に、言語ごとに登録できることです。つまりゲーム本体より先にページだけを読める状態にでき、本編の翻訳に踏み切る前に、その市場が反応するかどうかを確かめられます。
必要な文字量はごくわずかです。説明文と特徴の箇条書き、短いキャッチコピー。この業界に存在する翻訳作業の最小単位であり、1語あたりの露出量は最大です。だからこそ、ここは品質の影響も最も大きくなります。機械翻訳の出力を読まずに貼ったと分かるページは、そのゲーム全体にどれだけ手がかけられているかを閲覧者に推測させますし、その推測はたいてい好意的ではありません。
ウィッシュリストの文脈でこれを勧める理由は、結果が測れるからです。Steamworksではウィッシュリストの動きを国・地域別に確認できます。翻訳前と、同じくらいの宣伝量で回した1か月後を比べれば差が見えます。トラフィックはあるのにウィッシュリストがほぼ発生していなかった地域が動き出したなら、多くの開発者が推測でしか答えていない問いに、実データで答えを出したことになります。
数字の見方と、次の一手の決め方
見るべきは総数ではなく速度です。役に立つのは日次の増加を時系列で並べたグラフで、跳ねた日に「この動画」「このフェス」「この投稿」とラベルを付けたものです。横ばいの2か月に3回の山があるなら、その3つが効いた施策であり、繰り返す価値があるものだと分かります。
量だけでなく内訳も見ます。Steamworksでは追加・削除・購入への転換が分かれて見られます。追加は安定しているのに削除が多いなら、自分の客層とは少しずれた人を集めている可能性が高く、これは宣伝量の問題ではなく立ち位置やタグの問題であることがほとんどです。
そして地域別の内訳を、ページのアクセス元と並べて見ます。よく見に来ているのにウィッシュリストがほとんど発生しない地域は、はっきりした情報を出しています。見つけてはいるが行動していない、ということです。ジャンルが合っていない場合もありますが、ページが読めなかった場合もかなりあります。
発売前に問うべきなのは「これで足りているか」ではありません。その答えは誰にも出せませんし、ネット上で見かける目安の数字は、あなたのゲームではない作品から出たものです。問うべきは、まだ伸びているか、そして先月伸びた理由を自分の言葉で説明できるか、です。説明できるなら来月やることは決まります。説明できないなら、それこそが解くべき問題であり、カウンターを眺めるよりずっと有益な作業です。