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「翻訳させてください」のDM、本物と詐欺の見分け方

ストアページを公開した途端に、メッセージが届き始めます。「あなたのゲームが大好きです。私の言語に翻訳させてください」。別の一通は「うちはパブリッシャーで、あなたのゲームをこの地域に出せます」。さらに別の一通は「翻訳は無料でやります。収益の一部と、プロジェクトファイルをいただければ」。

この中には、本物もあります。実績のあるフリーランス翻訳者かもしれませんし、本当にあなたのゲームを自分の言語で遊びたいだけのプレイヤーかもしれません。一方で、今週だけで二百人の開発者に送られた同じ文面かもしれず、はっきりした詐欺のこともあります。狙われているのは、個人開発者が持っていて奪いやすいもの — ストアキー、ビルド、プロジェクトファイル、そして前払いのお金です。

厄介なのは、これを決着させられる唯一の材料、つまり相手の語学力を、あなた自身が評価できないことです。だからこの記事では、評価できるほうの材料を扱います。文面の書かれ方、要求してくるもの、逆に質問してくること — 翻訳が一文字も存在しない段階で見えるものだけで、かなりの部分は判別できます。

なぜ個人開発者が狙われるのか

個人や二人組のチームは、詐欺側から見て非常に狙いやすい相手です。理由は、開発者が世間知らずだからではありません。連絡先が公開されていて、購買プロセスも法務部もなく、しかも「あなたのゲームが好きです」という言葉が一番うれしい瞬間にその話が来るからです。加えて、すぐ換金できる資産を持っています。ストアキーは転売市場に流せますし、ビルドは別のストアで他人名義で再配布できます。

そして決定的なのが、納品物を検品できないことです。ひどいコードが納品されれば読めばわかります。しかしひどいポルトガル語が納品されても、それが優秀な訳文なのか機械翻訳の出力そのままなのか、見た目はまったく同じです。この非対称性こそが、まともに仕事をする気のない人にとって翻訳が魅力的な理由です。

とはいえ、いきなり届いた売り込みが悪い兆候というわけではありません。フリーランス翻訳は営業メールがごく普通に飛び交う業界で、後々もっとも頼りになる相手が、最初は一方的なメールとして現れることもよくあります。必要なのは疑心暗鬼になることではなく、半日で終わる確認手順を毎回同じように回すことです。

繰り返し現れる手口の型

怪しい売り込みに独創性はほとんどありません。少数の型を使い回しているだけなので、型を一度言語化しておけば、多くは最初の一通で見分けがつきます。

  • 一斉送信のテンプレ — 熱のこもった賛辞なのに、あなたのゲーム固有の話が一行もない。同ジャンルのどのタイトルにもそのまま使える褒め言葉なら、あなた宛てに書かれていません。
  • 納品前の全額前払い、しかも取り戻せない手段(ギフトカード、暗号資産、会話の相手と名義の違う口座への振込)。
  • 経歴をたどれないパブリッシャー話 — 翻訳を持つ代わりにその地域の独占権を、という提案で、契約書もなく、そのメール以前から存在した形跡のある会社でもなく、調べられるリリース実績もない。
  • キー集め — 「翻訳チーム用に」「レビュアー用に」「テスト用に」とまとまった本数のストアキーを求める。本物の翻訳者が必要とするのは一、二本で、しかも普通は仕事が決まった後に頼みます。
  • 仕事に不釣り合いな権限要求 — エンジンのプロジェクト一式、ソースリポジトリ、未公開ビルド、ストアの認証情報。テキストを訳すのにどれも要りません。
  • 「今は無料、あとで収益分配」で条件が曖昧なまま。割合を具体的に決めようとするたびに、数字ではなく安心させる言葉が返ってくる。
  • 確認できない実績 — どこにもクレジットされていない参加タイトル、出所をたどれない作業画面のスクリーンショット、先月できたばかりのポートフォリオサイト。
  • 作られた緊急性 — 期限付きの割引レート、金曜で締まる枠、逃すと間に合わないリリース時期。本物のスケジュールは存在しますが、まともな相手はそれを圧力ではなく制約として説明します。

本物の打診はどう見えるか

いちばんはっきりした違いは、話の向きです。プロは見積もりを出す前にこちらへ質問します。テキストは何ワード(何文字)あるか。どの形式で書き出せるか(CSV、JSON、スプレッドシート、エンジン固有形式)。テキストは確定しているか、まだ変わるか。用語集やキャラクター一覧はあるか。訳文を誰が何を基準にレビューするか。UIに文字数制限はあるか。これらを何も知らないまま金額と納期を即答してくる相手は、やる気がないか、仕事の中身を理解していないかのどちらかです。

二つめは、お金についての具体性です。まともな見積もりには単位があります。原文ワード単価か、訳文ワード単価か、原文文字単価か — どれで数えるかで金額はかなり変わるので、そこを明示します。含まれる工程(翻訳のみか、レビューまでか、実機での確認まで入るか)も書かれています。支払い条件があり、請求書が出て、最初のメッセージから振込先まで名義が一貫しています。

三つめは、何を要求するかです。翻訳者に必要なのは、テキストの書き出し、文脈情報(スクリーンショット、短い動画、キャラクター一覧、口調のメモ)、そして最終的には自分の訳文が画面に載った状態を見るためのビルドかキーです。リポジトリは要りません。良い相手なら、こちらから渡すと言っても「そこまでは不要です」と言います。

熱心なプレイヤーからの申し出は、劣った選択肢ではなく、まったく別種の会話です。自分の言語で遊びたいという動機は本物であることが多く、多くの場合は無償です。そのぶん、範囲、クレジット表記、できあがった訳文の権利、途中でやめたときにどうするか、といった話を先に決める必要があります。「安く済む外注」ではなく「設計が要る共同作業」として扱うのが正解です。

半日で終わる確認手順

探偵になる必要はありません。必要なのは毎回同じ順番で回す固定の手順で、そうすれば感じの良いメッセージも、こちらを操ろうとするメッセージも、同じフィルターを通ります。

  • 名乗っている参加タイトルと名前を一緒に検索し、そのゲームが本当に本人をクレジットしているか(クレジット画面、ストアページ、あなたとのやりとり以前から存在する公開プロフィール)を確認する。
  • 実務者にしかうまく答えられない質問を一つ投げる。たとえば、文中にプレイヤー名の変数が入っている行をどう扱うか、訳文がボタンに収まらないときにどうするか。ここでの曖昧さは、どんな実績表よりも雄弁です。
  • 実際に連絡できる推薦者を二件もらい、一件には本当に連絡する。
  • 少量の有償トライアルを出す。実際のテキストを数百ワード、文脈込みで、通常レートで。必ず支払ってください。無償トライアルこそ、まじめなプロと詐欺が同じに見える場所であり、支払うこと自体が「最初から納品する気のない相手」を弾きます。
  • そのトライアルを、別の話者に有償でチェックしてもらう。誰が訳したかは伏せて依頼します。品質を本当に評価する工程はここだけで、しかも本発注より桁違いに安く済みます。
  • 本番の作業に入る前に、支払いスケジュールを文面で合意する。着手金と納品後の残金に分けるのは普通ですが、実績のない相手への全額前払いは普通ではありません。
  • 最初の仕事は範囲を区切る。ストアページだけ、あるいは1章だけ。うまくいってから広げます。
どんな流れでも渡さないもの:
  - エンジンのプロジェクト一式、ソースリポジトリ
  - ストア・プラットフォームの認証情報、署名鍵
  - まとまった本数のストアキー
  - 合意のない段階での未公開ビルド
  - 取り戻せない手段での全額前払い

翻訳者が本当に必要とするもの:
  - テキストの書き出し(CSV / JSON / スプレッドシート)
  - 用語集、キャラクター一覧、口調のメモ
  - 文脈がわかるスクリーンショットか短い動画
  - 仕事が決まった後の、キー1〜2本

関係を壊さない断り方

ほとんどの打診には、短く、丁寧で、はっきりした返事だけで十分です。判断理由を説明する義務はありません。明らかな一斉送信であれば、返信しないことも正当な対応です。差し込みメールに礼を欠いたことにはなりません。ただし、こちらのゲームを見て個別に書いてきた相手には、二行の返信をしておくと、予算ができた日に開いておきたい扉が閉まらずに済みます。

良い相手は記録しておきましょう。具体的で筋の通ったことを書いてきた人を、言語ペア、提示レート(あれば)、やりとりの一行メモとともに、ただのテキストファイルに貯めていきます。実際に翻訳へお金を払える日が来たとき、そのファイルはその場で慌てて検索するどんな結果より価値があります。

断りの文面は英語で来ることが多いので、そのまま使える型を用意しておくと、返信までの心理的な負担がほぼ消えます。

予算がない、と断る:
Thanks for reaching out, and for playing the game. I'm not in a
position to commission a translation right now. If that changes,
would it be all right if I got back in touch? I've saved your details.

パブリッシャー・権利の打診を断る:
Thanks for the offer. I'm not looking for a regional publishing
partner at the moment, and I'm not able to share builds or keys
outside of that. I'll reach out if my plans change.

有志翻訳の申し出を、関係を保ったまま保留する:
It means a lot that you'd want to do this. I'm not ready to open the
game up for community translation yet, because I want to get the
process right first. I'll post about it when I am.

もう渡してしまった場合

起きるときは起きます。大事なのは、黙って抱え込まずに早く動くことです。ストアキーを渡してしまったなら、多くのプラットフォームでは未使用キーの無効化や取り消しが開発者側からできます。相手と交渉するのではなく、開発者向け管理画面から処理してください。認証情報を共有してしまったなら、変更したうえで、使えるところすべてで二要素認証を有効にします。支払ってしまったなら、追加の支払いを止め、異議申立ての仕組みがある手段を使っていたなら、次の約束を待たずにすぐ申し立てます。

自分が公開していない場所に自作ゲームのビルドが並んでいたら、主要なストアには権利者からの申告窓口があります。そちらを使ってください。DMで解決しようとしないこと。あなたは権利者であって、執行の役割はプラットフォームの側にあります。

そのうえで、記憶が新しいうちに経緯を書き残します。何を求められ、何を渡し、何で信じてしまったのか。引っかかる開発者のほとんどは不注意だったわけではなく、「自分のゲームを褒める言葉」がちょうど必要だった日にその一通が来ただけです。自分宛ての短いメモを残しておくことが、それを「思い出したくない失敗」ではなく「次回そのまま回せる手順」に変えてくれます。

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