Steamネクストフェス準備チェックリスト — 多言語で臨むための段取り
デモがあり、日程が決まり、Steamネクストフェスの枠を取った。多くのゲームにとって、この1週間は発売前で最大の注目が集まる期間です。しかもValveのルール上、1タイトルにつき参加は基本的に1回、発売前のみとされてきました。つまり本番の1週間より、その前の準備期間のほうが結果を決めます。開催時に用意できていないものは、そのフェスには存在しなかったことになります。
見落とされやすいのは、その注目がどこから来るかです。ネクストフェスは世界同時のイベントで、Steamは世界中のストアです。イベントページを眺めている人はあなたの言語で絞り込まれてはおらず、最初に目に入るのはカプセル画像と一行の短い説明文で、しかもそれは相手のSteamクライアントの表示言語で表示されます。相手の言語で存在しないものは、判断材料にすらなりません。がんばって読んでくれるのではなく、そのままスクロールされて終わりです。
この記事は、その前提に立った準備チェックリストです。どの言語まで手を広げるか、各言語で何を用意するか、期間中どう動くか、終わったあとに何を読み取るか。なお開催時期・登録締切・参加資格のルールは回によって変わってきているので、日程を前提に計画を立てる前に、Steamworksのドキュメントとイベント告知で最新の条件を必ず確認してください。
フェス期間中、ストアページに何が起きるか
期間中、登録されたデモは一箇所にまとめられて閲覧されます。そこで発生するトラフィックは、普段のストアの流入とは二つの点で性質が違います。まず前半に偏ること。開催直後の数日が最も見られます。そして圧倒的に「冷たい」こと。訪問者の大半はあなたのゲームを今初めて見た人で、多数のデモを次々と流し見しており、数秒で先を見るかどうかを決めます。
これは、あなたが持っているすべての面の役割を変えます。開発日誌を追ってくれている人は、多少ぎこちない英語の説明文でも読み進めてくれます。すでに好きだからです。3秒前にイベント一覧から来た人は読み進めません。そして今週に限っては、後者が観客の大半を占めます。
同時に、翻訳の費用対効果も変わります。短い説明文やデモのUIを訳す作業量は、閑散期にやってもフェス前にやっても同じです。違うのは、その結果を見る人数が数日間に凝縮されることです。いつかストアの表側だけでも訳すつもりがあったのなら、同じ手間が最も大きく報われるのがこの週です。
対応言語は「やりたい数」ではなく「間に合う数」で決める
翻訳は前倒しでしか吸収できない工程です。テキストを書き出し、訳し、確認し、ビルドに戻し、さらにゲーム内で読み直す。最後の読み直しでボタンからはみ出したり、フォントに文字がなくて豆腐(□)になったりするのが見つかります。各段階には待ち時間があり、デモのバグ修正と並行しているときに縮められる工程はほとんどありません。
ですから言語リストは、やりたいことから前向きに積むのではなく、登録締切から逆算して決めます。ある言語をリストに入れてよいのは、開催までに次の三つがすべて成立する場合だけです。ストアページが訳されていること、デモ本体のテキストが訳されていること、そしてストアページの対応言語の表記が実際のビルドの状態と一致していること。ページで対応を謳っているのにデモがその言語で動かない状態は、たった一度きりの露出の週に、最も避けたい形の落胆を公開の場で生みます。
数を減らしてきちんと仕上げるほうが、数を増やして粗く出すより良い。これはフェス期間中はとくに当てはまります。反応が即座に、しかも公開の場で返ってくるからです。壊れたテキストは数時間で見つかります。掲示板の投稿で、Discordで、あるいは配信者が訳されていないメニューを視聴者の前で読み上げる形で。
- まずデモの実際のテキスト量を数える — デモは本編の文字量のごく一部であることが多く、だからこそ訳せる
- ストアページの短い説明文と「このゲームについて」を同じ発注にまとめる — 量が小さく、しかも下流のすべてを左右する
- 翻訳そのものだけでなく、ビルドに入れたあとの修正パスの時間を確保しておく
- 間に合わない言語は今回のフェスから外す — デモは終了後も残り、あとから言語を足しても効き続ける
締切から逆算した計画の形(期間はテキスト量に応じて調整してください) D-8週 デモのテキストを凍結。記憶ではなく書き出し結果から文字量を数える D-7週 翻訳開始:デモ本体 + 短い説明文 + 「このゲームについて」 D-4週 訳文をビルドに反映。ゲーム内で一度通しで読む D-3週 修正パス:はみ出し、欠け文字、訳し漏れ D-2週 ストアページを言語ごとに更新。対応言語のチェックを合わせる D-1週 配信素材、返信の定型文、SNS投稿の予約
ストアページがすべての入口になっている
ある言語で一つしか仕上げられないなら、ストアページを仕上げてください。ページが読めない人はデモをダウンロードしません。つまりページの翻訳は、その週に動かしたい他のすべての数字の上流にあります。しかもページはあなたが持つテキストの中で最も量が少なく、露出あたりの手間という意味でこのチェックリスト中もっとも割の良い項目です。
訳すときは、ページ全体を一塊として渡すのではなく、要素ごとに分けて考えます。短い説明文は、閲覧画面やホバー表示でゲームに付いて回るため、文字数のわりに働きが大きい部分です。「このゲームについて」は、閲覧者が自分向けのゲームかどうかを判断する場所です。タグやジャンルは、そもそも誰の目に入るかを左右します。そしてカプセル画像やヘッダー画像に焼き込まれた文字は、ページの他の部分と違って言語で切り替わりません。キャッチコピーを画像に入れているなら、設定言語に関係なく全員が同じ言語のそれを見ることになります。
対応言語のチェックボックスは、正直さが問われる場所です。インターフェース・字幕・音声は別々の主張であり、メニューは訳したが会話は未対応、という部分対応の状態は、楽観的にではなく正確に表示すべきです。プレイヤーはダウンロード前にあの一覧を見ますし、そこが嘘だったことは覚えています。
配信・トレーラー・文字を焼き込んだもの
ネクストフェスでは、期間中に自分のストアページへ配信を流す枠があります。配信は性質上どうしても1言語のパフォーマンスになります。それ自体は問題ありません。6言語同時に喋ることはできません。重要なのは、その配信を囲んでいるページまで1言語になっていないことです。配信を見た人が、終わったあとに読めるページへ着地できなければ意味がありません。
映像は、言語が静かに固定化される場所です。トレーラーのテロップ、収録映像に映り込むチュートリアル表示、スクリーンショットに写るUI。これらは書き出した時点で言語が確定します。Steamは言語別のストア素材に対応しているので、2本目のトレーラーを作るのか、それとも1本目を文字に頼らない構成に編集し直すのかを決める前に、どの素材が言語別に差し替えられるのかをSteamworksで確認しておく価値があります。
この分野で最も安く効くのに最も飛ばされがちなのがスクリーンショットです。主要言語ごとにゲームを起動して撮り直すのは半日の作業ですが、「この言語圏のことは考えずに作られたゲームだ」という最も強い合図を消すことができます。
- トレーラーのテロップ — 訳すか、そもそも言葉に頼らない構成にするか
- スクリーンショット — 言語ごとに撮る。中国語で閲覧している人が英語UIしか見られない状態を避ける
- カプセル画像・ヘッダー画像 — 焼き込んだキャッチコピーは翻訳されない。文字なしにしておく選択肢を検討する
- 配信のオーバーレイと予定告知 — 最低限、時刻は自国以外でも誤解されない書き方にする
期間中の動き方
開催したら、仕事は作ることから見ることに切り替わります。反応は読めない言語でも届き、しかも速い。読むための機械翻訳はまったく問題ありません。機械翻訳の危険は出力側にあって入力側にはないので、言語の壁を理由に「何が言われているか知らない」状態にしておく必要はまったくありません。
準備しておくべきなのは返信のほうです。喋れない言語で、温かく、正確な文章を、デモが公開されている最中に急いで書く — 事故が起きるのはここです。必要になるとわかっているメッセージは、週が始まる前に下書きしておきましょう。遊んでくれたお礼、その不具合は把握していて修正中であること、その言語は現在未対応だが検討していること、不具合報告の窓口の案内。用意しておけば、緊張しながらの即興がコピー&ペーストに変わります。
期間中のビルド更新は保守的に。訳し漏れの文字列やボタンからのはみ出しを直すテキストだけの修正はリスクが低く、やる価値があります。閲覧が最も多い時期にデモの構造そのものを変えるのは別です。2日目に壊れたビルドは、残りの週を丸ごと失わせます。
最後に、集まった反応をあとで整理できる形で残しておきます。報告ごとに「どの言語から来たか」を付けておくだけで、混沌とした1週間の断片が実際に使えるデータになります。どの言語から報告が多かったか、どの言語で文字が収まらない問題が多かったか、どの言語のプレイヤーが本編の発売を待っていると言ってくれたか。
終わったあとのデータの読み方
終了後に最も役立つのは合計値ではなく、内訳の形です。期間中のウィッシュリスト追加がどの地域から来たかと、ページの閲覧がどの地域から来たかを並べて比べてください。訪問者は多かったのにウィッシュリストが相対的に少なかった地域は、その人たちにとってページがどう読めているかを教えてくれています。多くの場合、そもそも読めていません。その言語になっていないからです。
ただし、行動に移す前に交絡要因を疑ってください。ある言語圏の大きな配信者が1人いるだけで、その週のその言語は市場のように見えます。実際にはその配信者の視聴者だっただけかもしれません。すでに対応済みの言語が未対応の言語より数字が良いのは当然で、それは市場の事実ではなくあなたのページの事実です。そして絶対数は、そもそもその地域にSteamユーザーが何人いるかと切り離せません。自分の比率がおかしくないかを確かめる公開の基準としては、Steamのハードウェア&ソフトウェア調査の言語分布が使えます。
この読み取りの出口は、短く具体的な決定であるべきです。本編をどの言語で出すか、そしてデモに次に足す言語はどれか。最後の点が重要なのは、フェスが終わってもデモは消えないからです。デモは動き続け、見つけられ続け、ウィッシュリストを増やし続けます。1か月後に足した1言語も、その後の毎週ずっと働き続けます。