Steamストアページを英語化する手順 — 項目別の訳し方と優先順位
日本語のストアページは、ちゃんと機能しています。書いてある順番も、言葉づかいも、想定した読者に数秒でゲームの中身が伝わることも、自分で確認できているはずです。同じ仕事をする英語版がほしい。そう思ったときに真っ先に浮かぶのは、説明文を丸ごと翻訳ツールに貼って10分で終わらせる、という方法です。
しかしそれで出来上がるのは、たしかに英語ではあるけれど機能していないページです。Steamのストアページは一枚の文章ではありません。項目ごとに読む人も、読まれる場面も、うまく訳せていなかったときの損失も違います。しかもその一部は、こちらが何もしなくてもSteam側が勝手に各言語で表示してくれます。残りは、価値の順に並べて手をつけるべきものです。
この記事では、初めて英語版ページを作る個人開発者を想定して、その作業を項目ごとに追っていきます。ゲーム本体の翻訳より前に、あるいは本体は訳さないまま、ページだけ英語にするという判断は十分に合理的です。
自分で訳す必要がある項目は、思っているより少ない
英語圏のユーザーから見えるかたちで自分のページを開いてみると、すぐに気づくことがあります。かなりの部分が、すでに英語になっているのです。Steamはページの多くを、こちらが書いた文章ではなく、あらかじめ決められた語彙から組み立てています。タグ、ジャンル、カテゴリ、対応言語の表、レビュー評価の要約、価格と通貨、動作環境の項目名、ボタンやセクションの見出し。これらはすべてSteam側の文字列で、こちらが何もしなくても閲覧者の言語で表示されます。
自分で訳さなければならないのは、もっと短いリストです。短い説明文、「このゲームについて」の本文、動作環境に自由記述で書き足した注記、カプセル画像やスクリーンショットに焼き込んだ文字、そしてこれ以降に出すお知らせ。多くのインディーのページでは、合計しても数百語と画像が数枚という規模です。ゲーム本体の翻訳と比べれば、驚くほど小さい仕事です。
この切り分けには、もう一つ意味があります。ページの中で最も強く「発見」に効いている部分 — とくにタグ — は、最初から言語に依存しません。あなたが一度も意識したことのない国のプレイヤーに、今日この瞬間、あなたのゲームが表示されている可能性があります。彼らにできないのは、たどり着いたあとに、それがどんなゲームなのかを理解することだけです。ページの言語は、見つけてもらえない原因ではなく、見つけたあとに買われない原因です。
手をつける順番
一度に全部やる必要はありませんし、続ける価値があるかを見てから予算を追加してもかまいません。1語あたりの効果が大きい順に並べると、おおむね次のようになります。
- 短い説明文 — ページの外に出ていく唯一のテキスト
- 「このゲームについて」の最初の一段落と最初の画像 — スクロールするかどうかを決める材料
- 「このゲームについて」の残り(特徴の箇条書きを含む)
- スクリーンショットやカプセル画像に焼き込んだ文字(ある場合)
- 動作環境の自由記述と、対応言語まわりの注記
- 以降のお知らせ — ページだけ英語でお知らせが日本語のままだと、更新が止まった作品に見えます
短い説明文は「訳す」のではなく「書き直す」
短い説明文が最優先なのは、これがページの外に出ていく唯一のテキストだからです。検索結果や一覧でカプセル画像の横に並び、他のゲームのページのおすすめ枠に出て、カーソルを合わせたときのポップアップに出て、ウィッシュリスト登録者へのメールにも出ます。ほかの項目は「このページを見ると決めた人」が読むテキストですが、この一文だけは「見るかどうかを決める人」が読むテキストです。
そして、直訳が最もひどく失敗するのもこの項目です。短い説明文は圧縮された文章で、読者があらかじめ持っている前提 — ジャンルの共通認識、勝手にしてくれる比較、誰向けの作品かを示す語調 — に寄りかかって成立しています。意図ではなく文を訳すと、「なぜ面白いのか」ではなく「何が入っているか」を述べただけの一文になります。文法的には正しく、しかし何も起こしません。
とくに落ちやすいのが、日本語の宣伝文でよく使う言葉です。爽快感、やり込み要素、王道、世界観、癒し系、周回。これらは日本語のゲーム紹介では意味が確定していますが、対応する英語の単語があるわけではありません。機械翻訳は必ず何かしらの英単語を出してきますが、出てきたものは英語圏の読者にとって「感覚についての妙な主張」か、単に無内容です。逆に、ジャンル名(ローグライト、メトロイドヴァニア、デッキ構築)はそのまま通じることが多く、壊れるのはその周りの形容の部分です。
実務としては、元の日本語だけでなく、それを書いたときの下敷きを渡します。ジャンル、一行の売り、誰向けか、語調の参考になる既存タイトルを2〜3本。そのうえで「日本語を英語に置き換えた文」ではなく「英語で書き下ろした一文」を出してもらい、別の人に日本語へ訳し戻してもらって、自分のゲームについて本当のことを言っているかを確認します。ページの中でこの項目だけは、1語あたりの単価が高くても引き合います。
機械翻訳のまま公開したページは、向こうからどう見えるか
多くの人が心配するのは「文法が壊れること」ですが、それは今どき起きにくく、起きたとしても致命傷にはなりません。本当に痛いのは、文法的には完璧なのに何も具体的なことを言っていないページです。読者は引っかかりも印象も持たないまま、そのまま次のゲームへ行きます。
英語ネイティブから見たときの具体的な症状は、だいたい決まっています。
- 語調が読者と合っていない — 10代向けの作品なのに家電の説明書のような文体になる、あるいはその逆
- 宣伝用の形容がそのまま訳され、雰囲気を伝えるはずの一文が身体感覚についての主張になっている
- 固有名詞の綴りが、説明文とスクリーンショットとゲーム内でそれぞれ違う
- 箇条書きが主語のない断片になっている — 日本語では省略できたものが、英語では文の頭が欠けた行に見える
- 書式タグが飲み込まれたり重複したりして、見出しと箇条書きが一続きの文章の塊に潰れている
- 日本語の改行位置がそのまま残り、英語だと不自然に短い行が並ぶ
- 操作名やプラットフォーム用語が逐語訳されている — その環境で実際に使われている呼び方に合っていない
- 全角の記号(丸括弧、三点リーダ、波ダッシュ、感嘆符)がそのまま残り、英語の文中で明らかに浮いている
自分では確認できない、という前提で段取りを組む
読めない言語のページは、定義上、自分の目には問題なく見えます。これが一番やっかいなところで、だから確認の工程は「時間が余ったらやること」ではなく最初から計画に入れておく必要があります。
とはいえ、必ずしもプロのレビューが要るわけではありません。最低限として役に立つのは、英語を母語として読む人を一人見つけ、日本語の原文は見せずに英語版ページだけを読んでもらい、一つだけ質問することです。「これを読んで、どういうゲームだと思ったか。誰向けだと思ったか」。答えが曖昧だったり、見当違いだったり、スクリーンショットをじっくり見たあとでようやく出てきたりするなら、文が正しいかどうかに関係なく、そのページは未完成です。ジャンル・売り・想定プレイヤーが一息で返ってくるなら、そのページは仕事をしています。
ついでにもう一つ聞いておくと得をします。「どこか古臭い、あるいは会社が書いた文章みたいに聞こえるところはあるか」。ネイティブはこれを即座に感じ取りますが、こちらから聞かない限りまず言ってくれません。
外注するなら、何を渡すか
ストアの説明文は、材料なしで訳すのが非常に難しい部類のテキストです。短く、密度が高く、語調に依存していて、訳す人には見えないものへの言及だらけだからです。良い訳とそこそこの訳を分けるのは、支払う金額よりも、渡した材料であることのほうが多いくらいです。
渡すのはテキストファイルにします。ページのスクリーンショットや公開URLだけを渡すと、翻訳者は打ち直すことになり、書式は失われ、誰も気づかないタイポが入ります。画像と動画、できればビルドかキーも一緒に渡します。すでに英語表記を決めてある固有名詞は決定済みとして渡し、決めていないものは「未定」と明示します。そうしないと翻訳者が独自に綴りを決め、その食い違いに気づくのは数か月後のパッチノートになります。
ストアページ翻訳 依頼メモ - <ゲームタイトル> 対象言語: 英語 ファイル: short_description.txt / about_this_game.txt (プレーンテキスト) 文字数制限: 短い説明文はSteamの入力欄の上限に収めること 訳さないもの: ゲームタイトル、サークル/スタジオ名、下記の固有名詞 表記確定済み: <日本語名> = <English spelling>, <地名> = <English spelling> 参考資料: トレーラー <URL>、スクリーンショットは /screens、ビルドキーは希望があれば発行 語調: <例: 一人称・現在形・過度な感嘆符なし> 語調の参考タイトル: <英語圏の読者が知っている作品を2〜3本> ダジャレ・言葉遊び: <再現する / 現地で成立する別のものに置き換える / 落とす> 締切: <日付> 質問先: <連絡先>
公開後は地域別データで確かめる
Steamworksでは、訪問数・ウィッシュリスト登録・売上を地域別に見ることができます。英語版ページに効果があったかを測る手段としては、これが最も現実に近いものです。翌朝ではなく、数週間おいてから見てください。
意味があるのは、公開前後の絶対数の比較ではありません。その月に起きた他のこと — フェス、セール、実況動画、表示アルゴリズムの変化 — に簡単に汚染されます。見るべきは比率です。その地域からページにたどり着いた人のうち、何割がウィッシュリストに入れたか。それは、すでに売れている地域の比率と比べてどうか。人は来るのに残らないなら、ページの問題です。そもそも人が来ていないなら、それは発見の問題であり、翻訳をどれだけ磨いても解決しません。
そして結果は、翻訳の採点ではなく、次の判断の材料として扱います。英語版ページの転換率が国内と同程度まで来ているなら、その言語にもっと投資する根拠が手に入ったということで、次の一手はゲーム本体か、英語対応の体験版です。動かなかったとしても、数百語のコストでそれを知ることができました。ストアページを最初の実験に選ぶ理由は、まさにそこにあります。