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予算ゼロでゲームを多言語対応する — 無料でできる範囲と、できない範囲

ゲームの翻訳について書かれた記事は、最後にはたいてい金額の話に着地します。そしてその金額は、いま手元にある額より大きい。予算がゼロなら、考えるべきは「プロに頼めるか」ではありません。この仕事のうち、無料の努力が本当にカバーできるのはどこか、無理をすればカバーできるが品質が落ちるのはどこか、いくら時間を注いでも絶対にカバーできないのはどこか、です。

正直に答えると、作業のかなりの部分は無料でできます。ただし、その無料の部分にはほとんど「翻訳」が含まれていません。無料でできるのは、準備と、優先順位づけと、検証です。そしてこの三つはたまたま、最終的に手に入る訳文が有料であれ無料であれ、それが使い物になるかどうかを決める部分でもあります。

この記事では、時間しかないときにまず何をするか、自分の語学力と機械翻訳でどこまで押し切れるか、お金を払わない相手に何を差し出せるか、そして少しでもお金ができたときに最初にどこへ使うかを順に見ていきます。

無料は無料ではない — 時間とリスクで払っている

予算ゼロで計画を立てる前に、実際には何を支払っているのかをはっきりさせておきます。お金を使わない経路はどれも、ゲーム制作に使えたはずの時間を消費します。そしてリスクも消費します。資格のある誰も確認していない訳文は、あなたには見えない間違いを抱えたままプレイヤーに届き、その代償はレビュー、問い合わせ、予定していなかった修正パッチという形で現れます。

これはやめておけという話ではなく、順番の話です。無料の労力は、間違いが安く済んで取り返しがつく場所に使う。間違いが公開されて残る場所からは遠ざける。そして、どのリスクを引き受けているのかを、あとから発見するのではなく、最初から自覚して選ぶ。

使える時間についても現実的になっておく必要があります。全スクリプトを自分で機械翻訳を併用しながら訳し、一行ずつ確認する作業は、週末で終わる分量ではありません。数週間を割けないなら、丁寧さを下げるのではなく範囲を狭めてください。少量をきちんと仕上げたほうが、全体を雑にやるより結果がよく、あとから広げるのもはるかに簡単です。

先にやるべきは構造の整備 — 無料で、しかも後回しにすると高くなる

無料でできる作業のうち最も価値が高いのは、実はどの言語とも関係のない部分です。言語を足すことがコードの変更ではなくデータの追加で済む状態にすること。かかるのは自分の時間だけです。

具体的には、プレイヤーの目に触れる文字列をすべてコードから引き剥がし、書き出せるファイルに移すこと。日本語の文面そのものを識別子にするのをやめ、安定したキーを振ること。書いたものより長い訳文・短い訳文が来てもUIが破綻しないか確かめること。対象言語の文字が入っているフォントを用意すること。その言語の改行規則で不自然に切れないか見ておくこと。

この工程を飛ばしても節約にはならず、コストがより悪い場所に移るだけです。翻訳を受け取ったときにまだ文字列がソースコードに散らばっていれば、誰かが何百行を手作業でコードに埋め込むことになります。遅く、間違えやすく、言語ごとに、更新ごとに繰り返す羽目になります。「翻訳できる状態にする作業」のほうが翻訳そのものより大きかった、という話は珍しくありません。

いまやるべき理由はもう一つあります。以降のすべての選択肢が安くなるからです。きれいに書き出されたファイルを見て見積もる翻訳者は、プロジェクトの構造に振り回される翻訳者より安く早く出しますし、無償で手伝ってくれる人が最後まで走り切る確率も上がります。

ゲーム本編より先に、ストアページ

無料の労力が限られていてお金がないなら、最も遠くまで届くのはストアページです。分量は数百語程度、しかし大半の人が読む唯一のテキストであり、読めないことの損失が最も大きい面でもあります。どんなゲームか理解できなかった人が、理解するために買ってみるということは起きません。

短いからこそ、品質を集中させるのに最も安全な場所でもあります。数百語を本当に正しく仕上げること — その言語を話す人に見てもらい、直訳ではなく書き直すこと — は、全スクリプトでは不可能でもここなら無料の範囲で現実的です。そして短いからこそ、お金ができたときに真っ先に払う価値がある一枚でもあります。

ストアページにはもう一つ利点があります。データが取れることです。ページに一言語追加して、どの国から関心が来るかを見れば、次の労力をどの言語に割くべきかが分かります。勘で決めるよりはるかに確かな根拠です。本編を訳す前にページだけ訳して出すのは妥協ではなく、テストです。

自分 + 機械翻訳で、実際どこまで行けるか

予算のない個人開発者にとって現実的な組み合わせは、自分の語学力と機械翻訳・AI翻訳を、テキストの種類ごとに濃淡をつけて使うことです。

短く、繰り返しが多く、曖昧さの少ないテキストには十分に通用します。メニュー、設定、アイテム名、システムメッセージ。ここでの失敗は意味よりも長さと用語の揺れとして現れ、どちらも自分で機械的に検出できます。原文と訳文でプレースホルダーが一致しているかを比べる、原文とまったく同じまま返ってきた行を洗い出す、収まるべき文字数を超えた行に印を付ける。

うまくいかないのは、キャラクターの声、冗談、上下関係、文化的な参照が意味を担っている箇所です。そこでの機械出力は自信たっぷりに流暢で、静かに間違っています。対象言語が読めなければ、気づく手段がありません。テキスト量の多い物語ゲームなら、ここが無料経路の正直な限界です。そこを認めずに押し切った結果が、「文法は合っているのに何の魅力もない」と書かれるレビューです。

多くの小規模タイトルが選ぶ現実的な折衷は、分割することです。機械的なテキストは機械翻訳ベースで処理し、声が重要な部分だけは有償の仕事か、本当に流暢に読める協力者に回す。そこで次の話になります。

お金を払わない相手に、何を差し出せるか

差し出せるものはお金だけではありません。無償の協力関係にも成立するものはありますが、それは善意に全部を背負わせるのではなく、きちんと設計した場合に限ります。

最も多いのは、すでにゲームを好きなプレイヤーです。流暢で意欲のある人が、自分がよく知っているゲームを訳すと、驚くほどよい仕事をすることがあります。同時にリスクも実在します。途中でいなくなる、品質にばらつきがあるのに評価する手段がない、権利やクレジットの取り決めが曖昧なまま後になって揉める。お金が動かない場合でも、範囲・期限・クレジット表記・訳文の権利がどちらに属するかは、始める前に文章にしておいてください。

見落とされがちなのが、他の開発者です。相互レビュー — 自分は相手のテキストを日本語で確認し、相手は自分のテキストをその言語で確認する — はどちらにもお金がかからず、双方が「ゲームの文脈が分かる読み手」を手に入れます。対象地域の開発者コミュニティは、自分のストアページが実際の製品らしく読めているのか、それとも機械翻訳丸出しに見えるのかを教えてもらえる場所でもあります。丁寧に頼めば、対価は礼儀だけで済むことが多い。

どの形であれ、引き受けやすく、抜けやすくしておくこと。分量が明示された小さな塊と期限があれば人は終わらせます。構造も終わりもないスクリプト全体を丸ごと渡すと、たいてい何も出てこず、人間関係だけが減ります。

  • 依頼する前に、分量を行数か文字数で正確に伝える
  • 期限を示す。ただし守られなくても自分が耐えられる期限にする
  • ゲーム内とストアページに、本人が望む名義でクレジットを載せる
  • キーを渡す。友人の分も渡す。こちらの負担はほぼゼロで、実際に喜ばれる
  • 訳文の権利がどちらにあるか、こちらが編集してよいかを先に文章にしておく

無料では絶対に埋まらない部分と、最初の一円の使い道

無料版が存在しないものもあります。自分が話せない言語を自分で検証することはできません。対象言語を本当に読める人が、文脈の中であなたのテキストを見る、という工程の代わりになるものはありません。責任も無料では手に入りません。無償の協力者はあなたに対して何の義務も負っておらず、その人が止まれば作業も止まります。そして長期プロジェクトの一貫性も無料では買えません。それは同じ人が最後まで付き合うことに依存しているからです。

だから、支出の順番は「一円あたりどれだけ確実性が増えるか」で決めます。最初はストアページ。短く、閲覧数が多く、きちんと仕上げてもらう費用が小さい。次に、機械翻訳ベースのテキストに対する、その言語が読める人によるレビュー一巡。レビューは翻訳よりはるかに軽い作業でありながら、検証不能なファイルを品質の分かるファイルに変えてくれます。その次がゲーム最初の1時間。レビュー評価が形成される場所です。物語全体の翻訳はそのあとで、そのころには、その言語に投資する価値があるかどうかを示すデータが手元にあるはずです。

最後に、予算に関係なくやっておく価値のある無料の仕事があります。おかしな訳文を報告できる分かりやすい窓口を用意し、報告に実際に対応することです。数回のパッチで翻訳が目に見えてよくなっていくゲームは、「気にかけているゲーム」として扱われます。これは予算ゼロで手に入り、お金で買えるものの多くより価値があります。

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