日本語から英語へ — ローカライズで実際に変わること
日本語から英語への翻訳は「簡単な方向」だと思われがちです。多くのツールや翻訳者が英語をデフォルトの言語として扱うからです。しかしこの方向には、逆方向(英語から日本語)で起きる問題の多くが裏返しになって現れ、さらにこの方向特有の問題も加わります。日本語を原文とする場合、英語の訳文とそれが収まるUIで何が起きるかを整理します。
文字数は縮むのではなく伸びる
日本語は同じ内容を英語より少ない文字数で表せることが多く、漢字の熟語1つが英語ではまるまる1単語やフレーズに展開されることがあります。日本語から英語への翻訳では文字列はむしろ伸びる傾向があり、特に短いUIラベルでは、2〜3文字の日本語の用語が、同等の正確さと自然さを保つために大幅に長い英語フレーズを必要とすることが少なくありません。日本語の原文だけを基準に、余白なしで組んだUIは、英語ラベルの切れや折り返しをほぼ確実に引き起こします。
日本語が省略する主語と人称
日本語は主語(しばしば目的語も)を、文脈から明らかな場合に省略する言語です。「行く」の一文だけで「私が行く」なのか「彼女が行く」なのかを、文脈や動詞の形、文末表現から判断させることができます。英語の文法はこれを許さず、定形節には必ず明示的な主語が必要です。翻訳者は、数行前の文や別のファイル、テキストだけでは分からないゲーム内の状態から「誰が何をするか」を復元しなければなりません。これはあいまいさに起因するバグの典型例で、同じ日本語の一文に対して、文脈を十分把握しないまま選ばれた英語の主語が、シーンが進行すると矛盾して見えることがあります。
敬語のレジスターに対応する英語表現がない
日本語の動詞や文末の形は、ほぼすべての文でくだけた話し方から丁寧な「〜ます・です」、さらに改まった敬語まで、丁寧さの段階を文法上の要求として符号化します。英語は敬意を、こうした並行する文法体系ではなく、語彙の選択・言い回し・社会的慣習で表すため、ある日本語のレジスターを確実に再現する単一の英語構文は存在しません。翻訳者は語彙のフォーマル度、短縮形か正式形か、文の長さ、「please」や敬称のような明示的な丁寧さの標識といった間接的な手段でレジスターを表現するしかなく、これは機械的な置き換えではなく、そのつど解釈を要する判断です。
名前の順序と敬称接尾辞
日本語の人名は慣習的に姓が先(姓・名の順)で、これは英語の慣習と逆です。ローカライズチームは、姓を先に置く順序を維持するか、英語読者向けに名を先に置く順序へ入れ替えるかを、プロジェクト全体で一貫して決める必要があり、この判断は名前生成システムやプレイヤー入力欄も含めて統一して適用しなければなりません。
日本語はまた、会話の中で名前に-さん、-くん、-ちゃん、-様のような敬称を付け、それぞれが話者と相手の間の敬意・親しさ・年齢・性別関係についての情報を運びます。英語にはこれに相当する接尾辞体系がありません。ローカライズチームは通常、敬称を落として関係性をセリフのトーンで表現するか、ジャンルに慣れた読者向けに敬称をそのまま残すかのいずれかを選び、その判断を1行ごとではなくプロジェクト全体で一貫させる必要があります。
英語にはないオノマトペ
日本語には、音を模した擬音語と、音そのものではなく状態や質感、様子(視線の様子、ぬるぬるした手触り、重苦しい沈黙など)を表す擬態語からなる、非常に大きく生産性の高い体系があります。英語にも本来の意味でのオノマトペはありますが、日本語ほどの範囲や生産性はなく、特に擬態語には対応する語がそもそも存在しないことがよくあります。翻訳者はたいてい、1つの擬態語を説明的なフレーズや形容詞、あるいはまったく別の文構造に置き換える必要があり、これは全体的な文字数増加の問題に上乗せされる、もう一つの長文化の要因です。
よりコンパクトな言語向けに設計されたUI
UIが日本語の原文を基準にピクセル単位で調整されている場合、ボタンやタブ、ラベルはその言語の一般的な幅に合わせて設計されており、同じ概念を表す英語ラベルは、想定されていなかった折り返しや切れ、フォントサイズの縮小なしには収まらないことがよくあります。メニュー項目やステータス表示、短い確認ボタンは、もともと余白が最も少ないため特に影響を受けやすい箇所です。
実務上の確認ポイント
この方向特有の問題の多くは、以下の確認で早期に見つけられます。
- レイアウト設計時は日本語原文の長さではなく、想定される最長の英語文字列を各UI枠で計測する
- 明示的な主語のない日本語行には、翻訳者向けの文脈メモを付け、暗黙のまま判断を委ねない
- 名前の順序と敬称の扱いは1行ごとではなくプロジェクト全体で一度決めて文書化する
- 英語のセリフを通しで読み、レジスターに一貫性があるか確認する — 物語上の理由なく丁寧な英語とくだけた英語の間を行き来していないか
- 擬態語を多く含む行は、長い複文と同じように文字数増加のリスクとして扱う