pt-BR と pt-PT — 「pt」だけでは足りない理由
ポルトガル語は大西洋の両岸で書かれ話されており、主要な二つの変種——ブラジル・ポルトガル語とヨーロッパ・ポルトガル語——は近く、片方に習熟した翻訳者はもう片方も難なく読めます。しかしこの近さこそが、両者を一つの対象言語として扱ってしまう危険の原因です。綴り・語彙・呼びかけ方において、文法的にはすべて正しくても、もう一方の変種の母語話者には明らかに「よその言葉」に聞こえる形で分かれているのです。
タグ付け — 裸のptではなくpt-BRとpt-PT
BCP 47ではptがポルトガル語のベースタグで、地域サブタグのpt-BR(ブラジル)とpt-PT(ポルトガル、より広くヨーロッパ・ポルトガル語全般に使われる慣例)が二つの書記標準を区別します。ptとだけタグ付けされたファイルは、翻訳者にも翻訳メモリツールにも、どちらの綴り・語彙規範を適用すべきかの手がかりを与えません。その結果、ある文はブラジル方式、次の文はヨーロッパ方式という具合に、それぞれ単体では正しいポルトガル語でありながら、同じUI内で並ぶと違和感を生む不整合が静かに紛れ込みます。
綴りと語彙の違い
両変種は綴りにおいて無視できないほど分かれていたため、両者を近づけるための1990年正書法協定が結ばれましたが、その採用と運用は地域によって差があり、実務では日常的な綴りの違いが今も残っています。例えば「受付」はヨーロッパ・ポルトガル語でreceção、ブラジル・ポルトガル語でrecepçãoのように、ブラジル側で保持される子音がヨーロッパ側で落ちる(あるいはその逆の)ケースがあります。
語彙の違いは通常のUIテキストにも頻繁に影響します。「電車」はブラジルでtrem、ポルトガルでcomboio。「バス」はブラジルでônibus、ポルトガルでautocarro。「携帯電話」はブラジルでcelular、ポルトガルでtelemóvelです。どれも相手側の国で「間違い」というわけではなく、単に現地の読者が期待する語ではないというだけです。
性・数の一致の仕組みは共通、しかし語彙が変わると一致の対象も変わる
ポルトガル語の名詞は文法性を持ち、冠詞・形容詞と一致しながら複数形になります。この基本的な仕組み自体は両変種で共通で、スペイン語やフランス語に慣れたローカライザーにも馴染みのあるものです。ポルトガル語特有の落とし穴は、語彙が変種間で分かれているために、「同じ」概念であっても文脈によって性が自明ではない場合があることです。一方の変種の名詞を前提に組んだテンプレートは、もう一方の変種に適応させる際、単に訳し直すだけでなく再チェックが必要になります。
呼びかけ方は見た目以上に違う
ヨーロッパ・ポルトガル語では親称単数のtuと、より丁寧・距離を置いた呼びかけとして機能し三人称の活用を取るvocêを区別します。ブラジル・ポルトガル語では、多くの地域の日常会話でvocêがデフォルトの二人称としてはるかに広く使われ、tuは地域的に残っているものの、ポルトガルにおける二人称活用ではなく三人称活用と組み合わせて使われることが多くなっています。つまり、ブラジルでは中立的に丁寧に聞こえる文章が、ポルトガルでは不必要に堅苦しい、あるいはやや古風に聞こえることがあり、その逆も起こります。これも呼びかけ方の決定を「ポルトガル語」として一括りでなく、変種ごとに行うべき理由の一つです。
何を出すかを決める
ポルトガル語話者の人口が最も多いのはブラジルなので、一つの変種しか出せないチームの多くはpt-BRを選びます。ただし、ポルトガルや他のヨーロッパ・ポルトガル語圏市場から一定の関心が見て取れる場合、語彙と呼びかけ方の差は、想定していなかった側のオーディエンスに明らかに異質に聞こえるほど大きいものです。
- ファイルには常にpt-BRまたはpt-PTを明示的にタグ付けし、裸のptは使わない
- 分岐が知られている語彙(trem/comboio、ônibus/autocarro、celular/telemóvelなど)を変種ごとの用語集にまとめる
- 翻訳開始前に、変種ごとにデフォルトの呼びかけ方(tuかvocêか)を固定する
- pt-BRとpt-PTは地域的な置換で済ませる一つの翻訳ではなく、それぞれ別のローカライズ作業として扱う