インディーゲームの価格の決め方 — 勘で決めないための手順
ストアの入力欄が価格を要求してきて、何か数字を入れないと先に進めない。多くの開発者はここを一日で決めます。似たようなゲームがだいたいこのくらいだった、という漠然とした感覚を頼りに。そしてその後の一年、あれで良かったのかを考え続けることになります。リリースに関わる判断の中で、これは最も人目に触れやすく、かつきれいに取り消しにくいものの一つです。
どこかに正解が隠れているわけではありません。あるのは、意図したかどうかに関係なく価格が果たしてしまう役割です。ゲームの規模を宣言し、特定の他タイトルの隣に自分を置き、後からセールでできることの上限を決めてしまう。この三つを意識して選べば、最後の数字はだいたい自然に決まります。
この記事では、価格が何を伝えてしまうのか、他人の経験則ではなく自分の比較対象をどう集めるのか、なぜセールを最初から前提に設計する必要があるのか、そしてなぜ適正価格は一つの数字ではなく国ごとに違うのかを扱います。
価格は誰かが遊ぶ前から何かを語っている
価格は、ゲームについての主張として読まれます。レビューが一件もない段階で、この開発者はこのゲームをどれくらいの長さだと思っていて、どれくらい完成していると思っていて、どれくらい本気なのかを伝えてしまう。そしてその主張は、スクリーンショットと説明文に照らして二秒ほどで検証されます。噛み合っていなければ、噛み合っていないものとして感じ取られます。
だから「安くしておけば安全」というのは思われているほど安全ではありません。比較対象より明らかに安い価格は、気前の良さではなく警告として読まれます。未完成なのではないか、テンプレートを並べただけではないか、確かめるための一時間を使う価値がないのではないか、と。加えて、一本あたりの収益に永久に天井を作りますし、後から上げるのは代償が伴います。次に出す作品の相場まで自分で下げてしまうことにもなります。
高くつけるのは別の賭けです。期待値がその水準まで上がり、ゲームはそれに応えなければならなくなり、応えたかどうかの判定はレビュー欄で下されます。本当に恐れるべきなのは抽象的な高い安いではなく、最初の一時間が果たせない約束を価格がしてしまっている状態です。
もう一つ忘れられがちな効果があります。価格は客層を選別します。高めの価格は、そのゲームを名指しで選んだ少数の買い手を連れてきます。極端に安い価格は、何を買っているのかよく見ていない衝動買いを連れてきます。この二つは違うレビューを書き、初期のレビュー傾向はストア側の扱いにも影響します。
比較対象を自分で集める
ここで一番多い失敗は、比較する相手を間違えることです。つまり有名タイトルと比べてしまうこと。ジャンルの代表作がいくらだったかは、あなたがいくらにすべきかの根拠になりません。その価格は、宣伝予算や積み上げた評判や規模に支えられていたからです。しかもこの作業は生存者バイアスが特に強く出ます。すぐに思い浮かぶタイトルは、成功したから思い浮かぶのです。
そうではなく、意図して集めます。買い手が実際に知覚する軸で自分と近いものを探してください。ジャンル、規模、だいたいのプレイ時間、見た目の作り込み、個人制作かチーム制作か。最近のリリースに限ること。価格の相場は動くからです。十数本を目標に、聞いたことがあるものだけでなく、そこそこの成績だったものも含めます。そして頭の中でなく書き出すこと。
タイトル | 価格 | 目安時間 | レビュー数 | 発売時期 | 個人/チーム | 自分より近い?遠い?
---------+------+----------+------------+----------+-------------+---------------------
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12行以上埋めたら、次に答える:
- このグループが収まっている価格の「幅」はどこからどこまでか(平均ではなく幅)
- その幅の中で、自分の規模は正直どのあたりか
- 買い手が自分のゲームの隣に並べて見るのはどれか。並べたとき自分はどう見えるか最後に得たいのは一つの数字ではなく幅です。本当に自分と近いゲームたちはある範囲に分布していて、あなたの仕事はその範囲のどこに自分が正直に位置するかを決めることです。そして不安から下端に置くのではなく、決めた位置に置くことです。
この作業中に一つだけ抵抗すべき誘惑があります。プレイ時間で値段を決める考え方です。一時間あたりいくら、という発想は直感的で、現実には成立しません。密度が高く繰り返し遊べる作品を不当に安くし、水増しを報いる計算式ですし、そもそも買い手はその割り算をしていません。買い手がしているのは、この一式がこの数字に見合うかどうかという判断で、それは長さではなく体験についての判断です。
セールを前提に設計する
多くのストアで、多くのゲームは、生涯の販売本数のかなりの部分を定価ではなくセール価格で売ります。これは失敗ではなく、ストアがそう動いているというだけの話です。季節ごとの大型セールは大量の人が買い物をしに来る期間で、そこで見えているかどうかが効きます。つまりあなたの定価は、大半の買い手が払う金額ではありません。割引率を計算する元になる数字です。
そう考えると決め方が変わります。最も多く売れるであろう割引後の価格が、自分として納得できる金額になるように定価を置くこと。そして予定している割引率が、必死さではなく通常運転に見える範囲に収まるようにすること。発売から数か月で大幅に値引きするゲームは、自分の客に「待てばいい」と教えてしまいます。この学習は残ります。定価で買った人は損をした気分になり、買わなかった人は判断が正しかったと確認します。
発売時の割引は別の判断です。控えめな発売記念割引は一般的な慣習で、ウィッシュリストに入れていた人にいま買う理由を与え、露出が最も高い期間に売上を集中させます。一方で深い発売割引は見た目と逆の働きをします。そのゲームの価格の歴史を最安値から始めてしまい、以後のセールはすべてその値と比較されることになります。
ストア側の規則もあります。発売からどれくらい経てば割引できるか、割引と割引の間にどれだけ間隔が必要か、価格改定が実施中のセールとどう干渉するか。これらの規則は変わるので、数年前の投稿ではなく、使っているストアのパートナー向けドキュメントの現行版を読んでください。ここを読み違えると、季節イベントを丸ごと逃すことがあります。
適正価格は国によって違う
価格は一つの数字ではありません。国際的に販売するストアは、地域ごとに現地通貨の価格を持ちます。そして「これなら買ってもいい」と思える金額は国によって大きく違います。収入が違うからです。ある市場では気軽な衝動買いになる金額が、別の市場では検討を要する買い物になり、また別の市場では単純に手が届きません。
典型的な失敗は、自国の価格を為替レートで換算して終わりにすることです。為替レートは、違う所得水準で暮らす人にとってそのゲームがいくらの価値かについて何も語りません。機械的に換算した価格は、現地の感覚では不自然な位置に着地することがよくあります。ストアが地域別の推奨価格を出しているのはまさにこのためで、その推奨はあなたが持っていない購買行動のデータに基づいています。まず推奨から始めて、外す理由が具体的にある場所だけ外すのが妥当です。
価格の議論でたいてい抜け落ちる相互作用がここにあります。海外のプレイヤーと購入のあいだにある壁は価格だけではありません。もう一つは、ストアページを読めるか、そのゲームを遊べるかです。説明文を誰も読めない市場で値段を下げても効果は出ません。そもそも障害は価格ではなかったからです。その地域で下げるべきかを決める前に、二つの壁のどちらに当たっているのかを確かめる価値があります。
しばらく販売すれば、どんな一般論よりも自分の管理画面が教えてくれます。ウィッシュリストと販売本数がどの国から来ているか、そしてアクセスは来るのに購入に至らない国はどこか。アクセスが多いのに転換がほとんどない地域は、個別に調べる価値がある場所で、原因は価格と同じくらいの確率で言語です。
発売後に変えられること・変えられないこと
価格の変更は上下対称ではありません。この非対称性を発売前に理解しておくと、後悔が減ります。
- 定価を恒久的に下げるのは手続き上は簡単で、社会的には取り消せません。高く払った人は覚えていますし、そのゲームの価値の基準そのものが書き換わります
- 値上げは可能で、正当な場合もあります。大型アップデート後や早期アクセスを抜けるときなど。ただし事前に告知して理由を説明しないと、旧価格でウィッシュリストに入れていた人には裏切りとして読まれます
- 割引率は客の記憶の中で一方向にしか動きません。過去に一度でも出した最大の割引率が、待てる買い手が待つ価格になります
- 地域別価格は個別に調整できるので、定価より低リスクで試せる場所です
- バンドル、体験版、無料開放期間は、価格そのものを触らずに「その金額で得られるもの」を変えます。多くの場合こちらのほうが有効なレバーです
以上を踏まえた実務的な結論は、退屈ですが正しいものです。数時間かけて本物の比較対象リストを作る。そこに現れた幅の中で自分の位置を正直に決める。地域別価格は自分の換算ではなくストアの推奨から始める。発売時の深い割引は避ける。そして売上の数字から何かを結論づけるのは半年ほど様子を見てから。価格は、宿題をやることで妥当な答えの範囲が本当に狭まる、数少ないリリース判断の一つです。