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「英語版を出して」と言われたら — 最初の一通が来た日にやること

たいていは、トレーラーのコメント欄に一行だけ、あるいは見覚えのないアカウントからのメッセージとして届きます。please add English。スペイン語対応の予定はありますか。ポルトガル語で遊びたい。長い熱意の文章の最後に一言添えられていることもあれば、たった数語だけのこともあります。

うれしい反面、扱いに困ります。返事をするにも英語ですし、対応できるとも言えない。結果として、褒め言葉として受け取って流してしまいがちです。ただ、そのメッセージは本来お金を払わないと手に入らない種類の情報です。海外の誰かがあなたのゲームを見つけ、遊びたいと思うところまで理解し、そのうえで「何が障害になっているか」を自分から教えてくれた、ということだからです。

この記事では、その一通が届いてからの数日でやることを順番に扱います。決める前に何と返すか、要望が一人分なのか市場なのかをどう測るか、対応すると決めたら何から手を付けるか、断るならどう伝えるか、そして「翻訳しましょうか」という申し出にどう向き合うかです。

決める前に、まず返信する

多くの人は、答えが出るまで返信を保留します。翻訳にいくらかかるか分からないし、テキスト量も数えていないし、間違ったことを言うくらいなら黙っていたい。そうしているうちに一週間が過ぎ、一か月が過ぎ、質問した人は「この作品はもう更新されないのだろう」と静かに判断します。

返信は一分で済み、何も約束したことになりません。ここで唯一やってはいけないのは、時期を約束することです。「近いうちに対応します」と言って八か月沈黙するのは、「今のところ予定はありません」と正直に言うよりずっと印象を損ないます。前者は期待を作ってから壊しており、人は壊された期待のほうを長く覚えているからです。

よい返信は三つのことをします。感謝を伝えること、いまの状況を正直に書くこと、そして質問を一つ返して、コメントを情報に変えることです。「どの言語か」は聞く価値があります。スペイン語はスペイン向けと中南米向けで別の仕事になりますし、ポルトガル語もブラジルとポルトガルで別です。中国語には簡体字と繁体字があります。範囲も同じで、メニューとチュートリアルが読めればいいのか、本編のテキストまで求めているのかで、規模が一桁変わります。

英語で返す必要はありますが、機械翻訳で下書きして構いません。凝った文章を書こうとせず、短く、断定を避けた文にするほど誤解が減ります。次のような定型文を用意しておくと、届くたびに悩まずに済みます。

--- 予定がまったくない場合 ---
Thanks for playing, and thanks for asking. Right now the game is only available in Japanese, and I don't have a translation scheduled yet. I am keeping a list of the languages people ask for, so this counts. Which language would you want, and did you find the game through a video or on the store?

--- 検討はしている場合 ---
Thank you. An English version is something I want to do, but I can't promise a date yet — I need to work out how much text the game actually contains first. If you follow the game on its store page, any change to the supported languages shows up there.

--- 対応が決まっている場合 ---
Good news: English is coming in the next update. I'll post an announcement on the store page when it goes live. If you spot anything that reads badly once it's out, please tell me.

その要望がどれくらいの大きさなのか測る

一通のメッセージは市場ではありません。ここでの失敗は二方向にあります。「一人だけだから」と無視してしまうのがよくあるほうで、たった一人の要望に合わせて半年分の計画を組み替えてしまうのが、頻度は低いものの高くつくほうです。

安上がりな解決策は、感覚で判断するのをやめて記録を取ることです。日付・要望された言語・どこから来たか、この三つをメモに一行ずつ足していくだけで、一件あたり数秒しかかかりません。一、二か月続けると「なんとなく多い気がする」ではなく、実際の分布が手元に残ります。

そのうえで、すでに持っているのに見ていないデータを読みます。Steamで販売しているなら、Steamworksでウィッシュリスト・トラフィック・売上を国別に見られますし、レビューがどの言語で書かれているかも分かります。他のストアにも同種の国別データがあります。メッセージにも国別データにも同じ地域が出てくる言語と、メッセージにしか出てこない言語は、まったく別の話です。

件数そのものより、経路が独立しているかを重く見てください。ある実況動画の直後に二日で届いた三十件は、三十件のデータではなく一つのコミュニティです。逆に、無関係な場所から週に二件ずつ二か月続くほうが、数は少なくてもはるかに強い信号です。記録を見返すときは、次の点に答えられるかを確認します。

  • 言語のどの版が求められているか(スペイン語なら地域、中国語なら簡体字か繁体字か)
  • UIが遊べればいいのか、本編テキストが読めることを求めているのか
  • 要望が特定の動画の直後に固まっているのか、無関係な経路から継続的に届いているのか
  • その国がウィッシュリストやレビューのデータにも現れているか、メッセージだけか
  • その地域の人が実際に買いやすいか(販売可否、現地通貨での価格、決済手段)

対応すると決めたら、いちばん小さい形から出す

ゲームに言語を足す作業は、一般にローカライズと呼ばれます。テキストを訳すことと、ゲーム側が複数の言語を持って切り替えられるようにすること、その両方を含んだ言葉です。つまり一つの作業ではなく複数の作業の集まりで、ここが見落とされがちなのですが、全部を終わらせないと出せないわけではありません。

最初に手を付けるのはストアページです。ゲーム内が数千から数万文字あるのに対して、ストアページは数百文字程度でしかありません。それでいて、その言語の人があなたのゲームを検討できるかどうかを決めているのはこのページです。効果がなければやめられる、という意味でも軽い一手です。数か月見て何も動かなければ、小さな翻訳費用でその答えを買えたことになります。

次がUIです。メニュー、オプション、チュートリアルの指示、エラーメッセージ、実績名。ここまで対応すると「買える」から「遊べる」に変わります。多くのゲームでは全体の文字量のごく一部です。本編テキストは最後で、規模も費用も他とは桁が違います。

この順番には一つだけ正直な例外があります。ノベルゲームやストーリー重視のRPGでは、本編テキストそのものが商品です。UIだけ訳しても、要望をくれた人の期待には応えられません。その場合は対応言語の表記を正確にして、「物語が読める」と誤解して買われることのないようにしてください。

費用面で驚くのは、たいてい翻訳そのものではありません。テキストがコードやシーン、画像の中に直接書き込まれていて、書き出して人に渡せる形になっていない、と気づいたときです。もしそうなら、本当の作業はテキストを外に出すことのほうです。頭の中で工期を見積もる前に、まして誰かに時期を伝える前に、この確認を済ませておく価値があります。

そして実際に対応したら、要望をくれた人に知らせてください。その言語での最初のレビューを書いてくれる可能性が最も高い相手です。追加した言語で書かれた実感のこもったレビューは、それを得るのにかかった翻訳費用より価値があります。

対応しないと決めたら、はっきりそう言う

断るのは正当な答えです。ほとんどのゲームはほとんどの言語に対応できませんし、翻訳より本編を完成させることを選ぶ個人開発者の判断は十分に説明のつくものです。

説明がつかないのは沈黙のほうです。返事がないことは「開発終了」と読まれますし、どこかに答えを置いておかない限り同じ質問が延々と届き続けます。ストアページの一行、固定投稿、コミュニティのよくある質問。どれでもいいので、現在の対応言語と、増える予定があるかどうかを一度書いておけば、全員に同時に答えられます。

理由は一文で構いません。謝りすぎる必要はなく、「絶対にやらない」とも言わないでください。気が変わる条件があるなら、それを書きます。売上が費用をまかなえる水準に届いたら、いまのコンテンツ計画が終わったら、組める相手が見つかったら。条件を示すのは誠実ですし、質問した人が買ったり友人に薦めたりして実際に動かせる要素でもあり、守れない約束をせずに済みます。

--- 断るが、可能性は閉じない返信 ---
Thanks for asking, and sorry for the blunt answer: I can't add an English version right now. The game has a lot of text and I'm working on it alone, so a translation would take months I don't currently have. If sales get to the point where they'd pay for it, adding languages is the first thing I'd spend that on — I'll post on the store page if that changes.

「翻訳しましょうか」と言われたら

翻訳の要望に続いて最も多いのが、「自分が訳します」という申し出です。作品を気に入ったファンのこともあれば、実績が欲しい学生のことも、仕事として売り込んでいるプロのこともあります。

有志翻訳は成立するときはとてもうまくいきます。小さなゲームの評判のいい海外版が、プレイヤーの熱意から生まれた例は珍しくありません。一方で失敗の仕方には特徴があって、途中で止まります。熱意はスケジュールではありませんし、すでに配信したビルドの中で六割だけ訳された言語は、最初から対応していない言語より厄介です。埋まっていない部分の説明をするのはあなたになるからです。

受けると決めたら、厚意ではなく小さなプロジェクトとして扱い、いくつかのことを文字で残してください。チャットのメッセージでも文字です。何をどこまで訳すのか、どのファイル形式でやりとりするのか、だいたいいつ頃までか、クレジットにどう名前を出すか、そして成果物を将来のアップデートも含めて使用・修正・配信してよいこと。これらは冷たい態度ではありません。半年後にセリフを一行変えたくなったときに、良好な関係が揉め事に変わるのを防ぐ部分です。

もう一つ、自分では読めないものをどう検収するかという問題が残ります。少なくとも一部分については第三者の目を入れる前提で考えてください。最初の翻訳者と無関係の人に数百行だけ有償でチェックしてもらう費用は、判断できないテキストをそのまま出荷するリスクに比べれば安く、残りが安全かどうかも早く分かります。

こちらから接点を持っていない相手からのメッセージによる売り込みは、遊んでくれている人からの申し出とは別カテゴリとして、もう少し慎重に扱ってください。自分で確認できる過去の実績を尋ねる、いきなり全体ではなく少量の有償トライアルから始める、ファイルを渡す前に支払い条件を決める、そして即断を迫る相手や、何も決まらないうちにビルドを求める相手には注意する。まっとうな翻訳者なら、このどれを求められても嫌がりません。

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