ゲームの海外展開・翻訳外注の前に読む本 おすすめ4冊【個人開発者向け・読む順番つき】

本ページにはアフィリエイト広告(Amazonアソシエイト)が含まれています。価格・在庫・版はリンク先のAmazon.co.jpでご確認ください。

「海外でも売りたい」と決めたとき、多くの人が最初にするのは翻訳者探しです。しかし結果を決めるのはその前の判断です。どの言語を、どの順で、どのテキストまで対象にするのか。翻訳者に何を渡すのか。テストはいつ入れるのか。これは翻訳の技術ではなく、発注側の判断の問題で、出してから気づくより本で先に知る方がはるかに安くつきます。

この記事は、その「頼む前」に読む本を4冊だけに絞りました。ゲームのローカライズ(他の言語のプレイヤー向けに作り替えること)はまとまった本が少ない分野なので、長いカタログではなく、「海外展開の全体像」「依頼の計画と進め方」「元の日本語の表記基準」という3つの役割に1冊ずつ(表記だけは性格の違う2冊)を当てています。各節では、何が分かるか、誰には向かないか、読んだ後に何を決められるかを書きます。

本の説明は目次と出版社の紹介文に基づきます。ここで加えているのは「よくある失敗のどれに、どの本が効くか」という対応づけだけで、感想や星の数は書きません。まず1冊なら、海外で「届ける」までの流れを日本語で一望できる次の本からです。

以下はアフィリエイト広告(Amazonアソシエイト)です。リンク先はAmazon.co.jpです。

  • 日本語 · 技術評論社 · 2021

    インディーゲーム・サバイバルガイド

    一條貴彰(著)、PLAYISM(監修)

    ゲームを「完成させる」「知ってもらう」「届ける」「続ける」の4段階で、プレスリリース、展示会への出展、パブリッシャーとの契約といった実務を、インディー開発者へのインタビューとともに解説。

    向いている人: 海外展開も視野に入れる日本のインディー開発者。海外パブリッシャーと契約済みの人には既知の内容が多い。

この記事の選び方 — 4冊に絞った基準

基準をはっきりさせた分、冊数は少なくなっています。

  • 当事者が書いた本か、業界で基準として使われている用語・表記集であること。要約の要約は載せません。
  • 執筆時点で新刊として入手でき、最新版であること。版と出版年はカードに明記しています(古い本も入っているので、ここは重要です)。入手できるかはカードのリンク先で確認してください。
  • 読んだ後に「決められること」があること。言語の優先順位、依頼の範囲、表記の基準など、今週の判断に使えるもの。
  • 1つの役割に1冊。例外は表記の基準書で、文章量によって合う本が分かれるため2冊を並べ、どちらか1冊を選ぶ形にしています。
  • 翻訳の技法書は入れません。発注する側に先に必要なのは技法ではなく判断だからです。

翻訳を頼む前に全体像を掴む — 海外展開のどこに翻訳が入るか

『インディーゲーム・サバイバルガイド』(一條貴彰 著、技術評論社)は、ゲームを「完成させる」「知ってもらう」「届ける」「続ける」の4つの段階に分け、プレスリリース、展示会への出展、パブリッシャーとの契約といった実務を、開発者へのインタビューを交えて解説する本です。日本語で、日本のインディー開発者の立場から書かれているのが、この記事で最初に置く理由です。

本書の4段階に翻訳を当てはめると見えてくるのは、翻訳が海外展開の「一部」でしかないことです。翻訳した本体を出すだけでは届かず、ストアページ、プレス向けの資料、コミュニティでのやり取りが同じ言語で揃って初めて「届ける」になります。つまり翻訳の範囲を決めるとは、どの市場に本気で出るかを決めることと同じだと、読む前に知っておけます。

向かない人は、すでに海外のパブリッシャーと契約して実務を回している人です。既に知っていることが多いはずです。向いているのは、自分で出すかパブリッシャーに任せるかをまだ決めていない人で、読み終えると、その判断の材料が揃い、パブリッシャー契約の章は、翻訳の費用を誰が持つのかを考える材料になります。世界同時リリースの段取りは、この本の「届ける」の章を翻訳の側から補う記事です。

依頼の計画と進め方 — プロデューサー視点の手引き

The Game Localization Handbook(Chandler / Deming 著、第2版)は英語の本で、翻訳者ではなく「ローカライズの進行を担う人」に向けて書かれています。計画と予算、プリプロダクション、外部ベンダーとの仕事の進め方、テストまでを、実際のタイトルの事例つきで扱います。初めての依頼で一番役に立つのは順序です。何を先に決めるか、翻訳者に何を渡すか、言語のテストをスケジュールのどこに置くか。

第2版は2011年で、ツールやプラットフォーム、ストアの要件に関する記述は古く、現在の公式ドキュメントで確認し直す前提です。変わっていないのは判断の中身です。範囲、スケジュール、渡す資料一式、テストの時期。この部分は今読んでも古びていません。

向かない人は、英語の実務書を読まない人です。その場合は無理に買う必要はなく、ストアとエンジンの公式ドキュメントと、後述の無料資料で同じ判断を組み立てられます。向いているのは、放っておくと初めてのローカライズでスケジュールを超過して学ぶことになる人です。

読み終えたら3つ決められます。最初のリリースでどこまで翻訳するか(UI、ストアページ、字幕、サポート文)。LQA(ローカライズQA)をスケジュールのどこに入れるか(終わった後ではなく)。翻訳者に初日に渡す一式に何を入れるか。用語集、1枚のスタイルガイド、単独では意味が取れない文の文脈です。一式の中身はローカライズキットに何を入れるかで扱っています。

以下はアフィリエイト広告(Amazonアソシエイト)です。リンク先はAmazon.co.jpです。

  • 英語 · Jones & Bartlett Learning · 2011 · 第2版

    The Game Localization Handbook

    Heather Maxwell Chandler, Stephanie O'Malley Deming

    翻訳者ではなく「ローカライズの進行を担う人」向けの実務書。計画と予算、プリプロダクション、外部ベンダーとの進め方、テストまでを、実際のタイトルの事例つきで扱う。ツールやプラットフォームの記述は古いが、判断の順序は今も変わらない。紙の輸入版は高価なので、日本から買うなら現実的にはKindle版。

    向いている人: 初めてローカライズを計画するプロデューサー・リード・個人開発者。文レベルの翻訳技法を求める翻訳者向けではない。

元の日本語を整える — 表記の基準を1冊決める

翻訳の品質は、原文がどれだけ整っているかで大きく決まります。同じアイテムが画面によって「回復薬」と「かいふく薬」、数字が全角と半角の混在、「下さい」と「ください」が並ぶ。書いた側には癖の違いでも、翻訳者はそれを「意図的な差」として読み、別の訳語を当てます。表記の基準を1冊決めて、翻訳に出す前の原文に当てるのが、言語数が増えても費用が増えない、数少ない投資です。

『記者ハンドブック 新聞用字用語集』(共同通信社、第14版)は、新聞記事の表記を統一するための用字用語集で、送り仮名、かな遣い、漢字と仮名の使い分け、差別語・不快用語への配慮までを扱います。ゲームの文体には堅すぎる場面もありますが、役割は「迷ったらこれに従う」と決めておく基準であって、文体の手本ではありません。語彙の判断が多い、セリフやテキスト量の多い作品に向きます。

『日本語表記ルールブック』(日本エディタースクール 編、第2版)は、句読点、かっこ類、数字の表記、送り仮名といった表記の基本ルールを項目別に整理した本です。項目が独立しているので、自分たちのスタイルガイドの「表記」欄の土台にしやすいのが利点です。UIテキストが中心で1文が短い作品なら、こちらで足ります。

2冊とも買う必要はありません。長い文章とセリフが中心なら記者ハンドブック、短いUI文が中心ならルールブックです。向かない人は、方言や独特の文体が作品の核で、統一しないと既に決めている人です。ただしその場合も「意図的に崩している箇所の一覧」は翻訳者に渡す必要があり、基準があるからこそ例外が書けます。読み終えたら、スタイルガイドの表記欄が埋まり、用語集を作るときの判断が速くなります。

以下はアフィリエイト広告(Amazonアソシエイト)です。リンク先はAmazon.co.jpです。

  • 日本語 · 共同通信社 · 2022 · 第14版

    記者ハンドブック 新聞用字用語集

    一般社団法人共同通信社(編)

    新聞各社が表記を揃えるために使う用字用語集。漢字と仮名の使い分け、送り仮名、かな遣い、差別語・不快用語への配慮を実例つきで示す。日本語の表記で迷ったときの「これに従う」基準として。

    向いている人: 日本語のテキスト量が多く、表記の拠り所を1つ決めたいチーム。文体の手本ではない。

  • 日本語 · 日本エディタースクール出版部 · 2012 · 第2版

    日本語表記ルールブック

    日本エディタースクール(編)

    句読点、かっこ類、数字の表記、送り仮名といった日本語表記の基本ルールを項目別に整理した短い参照書。通読でき、スタイルガイドの「表記」欄の土台にしやすい。

    向いている人: 表記のルールを短時間でまとめて確認したい編集者・翻訳者。体系的な文章読本ではない。

買う前に — 無料で足りる範囲と、よくある質問

最もよく使う資料のいくつかは、無料で公式に公開されています。先にこちらを手元に置き、足りない深さを本で補う方が、費用をかけない順番です。

日本翻訳連盟が公開している「JTF日本語標準スタイルガイド(翻訳用)」は、翻訳文の表記ルールをまとめた無料の文書で、表記欄の土台はこれだけで足りる場合も多くあります。Microsoft は言語ごとのスタイルガイドを無料で公開しており、日本語版も含め、UI文言の表記や句読点の慣習が書かれています。翻訳先の言語のものを翻訳者に示せば、自分でルールを書く代わりになります。Steamworks のドキュメントにはローカライズと対応言語の章があり、インターフェース、字幕、音声のどれを「対応」と呼ぶかが定義されています。使っているエンジンの公式ドキュメントのローカライズの章は、書き出し形式や複数形の扱い、フォントの代替を扱っています。

無料資料の限界も2つあります。計画と範囲の判断には役立たないこと、そして海外展開の全体像は教えてくれないことです。そこが本の役割です。本は出版社のページからも購入でき、各カードには出版社のページへのリンクがある場合は併記しています。図書館で先に中身を確かめるのも、基準書については特に有効です。

買う前によく聞かれることが2つあります。電子版と紙はどちらがよいでしょうか。1回読む本はどちらでも構いません。表記の基準書は「引く」本なので、検索できる電子版が便利です。価格と現在の形式はリンク先の商品ページで確認してください。変わるので、この記事には書いていません。

翻訳者を目指す人向けの本や、英語の理論書はありますか。当サイトの「ゲームの多言語対応・海外展開を学ぶおすすめ本」のページに、翻訳の技法書、英語圏の理論書、英語の表記基準を分野別にまとめています。

まとめ — 読む順番と、4冊で決められること

海外展開のどこに翻訳が入るかはサバイバルガイドで。依頼の範囲、テストの時期、翻訳者に渡す一式はローカライズのハンドブックで。翻訳に出す前の日本語の表記は、記者ハンドブックかルールブックのどちらか1冊で。決めるべきことが3つ、本が4冊。初めてのローカライズで高くつく驚きの大半は、最初の1行を翻訳に出す前に取り除けます。今日1冊だけ買うなら、サバイバルガイドです。

読む順番は決められることの順で、全部を通読する必要はありません。

  • 1冊目: インディーゲーム・サバイバルガイド。通読。急ぐなら「届ける」の章から。週末ひとつ分。
  • 2冊目: The Game Localization Handbook。計画とベンダー管理の章を先に。残りは必要な章だけ引く。数日に分けて。
  • 3冊目: 記者ハンドブック、または日本語表記ルールブックのどちらか1冊。通読しない。用語集とスタイルガイドを作る作業の横に置き、迷った語を引く。

以下はアフィリエイト広告(Amazonアソシエイト)です。リンク先はAmazon.co.jpです。

  • 日本語 · 技術評論社 · 2021

    インディーゲーム・サバイバルガイド

    一條貴彰(著)、PLAYISM(監修)

    ゲームを「完成させる」「知ってもらう」「届ける」「続ける」の4段階で、プレスリリース、展示会への出展、パブリッシャーとの契約といった実務を、インディー開発者へのインタビューとともに解説。

    向いている人: 海外展開も視野に入れる日本のインディー開発者。海外パブリッシャーと契約済みの人には既知の内容が多い。

関連記事